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カツオ「側線」で判断

今回は読者の方からいただいた2つの質問にお答えしたいと思います。まず一つ目は「『しげえむ』という魚のことを聞きました。由良で揚がるそうですが、『しげえもん』のなまったものですか。オコゼにそっくりだが、とげに毒がなく、ヒレが寝ているそうです。詳しく教えてください」という内容でした。

しげえむはやはり地方名で、鶴岡市場ではしげえもんと呼んでいます。事典には載っていませんでした。全国名はおそらく、ケムシカジカという魚だと思います。北海道ではケムシカジカを「とうべつかじか」と言います。カサゴのように、すむ場所で多少、体の色が違ってくると思います。オコゼに似ているということですが、オコゼにはたくさんの種類があります。たぶん、この辺で珍重されているオニオコゼを指しているのでしょう。

オニオコゼ似の白身ですから、刺し身もOKですし、空揚げにも向きます。この辺ではみそ汁にするケースが多いと思います。これまで見る機会がなかったかもしれませんが、最近は水揚げが多少あるので、店頭に並んだのかもしれませんね。由良に限らず、鼠ケ関、酒田でも捕れます。

しげえもんは卵がおいしいそうです。卵は緑色で、しょうゆ漬けにすると、ハララゴに味が似ていて、ハララゴよりうまいと思うと魚通の人が言っていました。

次の質問はカツオについてです。「初ガツオの水揚げのニュースを見ました。カツオについて教えてください。庄内でも捕れますか」というものでした。

カツオの名前の由来は平安時代までさかのぼるそうです。昔は干して食べていて(今のかつお節とは違います)、それが堅いので「かたうお」と呼ばれ、それが「かつお」に転じたようです。生食が普及したのは江戸時代のことです。生で食べるようになってから価格が上がり、そして江戸っ子の大好物になりました。ことに初ガツオへのこだわりは尋常ではなかったようです。

カツオは、初ガツオと戻りガツオに大別されます。餌を求めてフィリピン海域を旅立ち、沖縄、九州を通り、3月下旬から4月ぐらいには四国の南方と紀伊半島で捕れ始めます。5、6月は伊豆と房総沖、7、8月ぐらいは常磐と三陸沖まで進んできます。ここまでが初ガツオです。つまり北上するカツオを初ガツオ、または上りガツオと呼ぶのです。水温が下がり始める10月ごろに三陸沖でUターンして南下します。これを戻りガツオとか下りガツオと言います。カツオはうろこがないので、水の抵抗をあまり受けず、時速30キロというハイスピードで泳ぐそうです。

今の時期は初ガツオです。江戸っ子の大好物でした

庄内では一般に言うカツオは捕れません。シマガツオとかソウダガツオと呼ばれるものがちょっと揚がる程度です。カツオの選び方ですが、刺し身になっている場合は身も血合いも赤いものが新鮮なのです。包丁を入れる前のカツオなら、胸から尾にかけて流れる側線に注目してください。ぼやけて幅が広いものが脂がのっているのです。

刺し身をマヨネーズニンニクしょうゆにつけて食べるのが鹿児島・枕崎の一本釣り漁師の食べ方です。すりおろしたニンニクとタマネギを加えたしょうゆだれに2、3時間漬け込み、ご飯に乗せてお湯をかけます。これが漁師風カツオ茶漬けです。今の時期の初ガツオ、脂がのった戻りガツオ。カツオにはそれぞれの時期に応じた食べ方があります。魚というのは、四季を通じていろいろな料理が可能な食べ物だとあらためて思いました。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年4月27日付紙面掲載

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