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おいしく体にいいキチジ

読者から「お歳暮で仙台のかまぼこをちょうだいしました。原料の中にキチジという魚がありましたが、あまり耳にしません。どんな魚ですか。庄内でも捕れますか」という質問をいただきました。

キチジは標準和名です。やはり地方名があり、仙台でキンキ、青森でキンキン、北海道でメンメと呼ばれます。キンキという名を聞くと、「あっー」と思う方もいるかもしれません。漢字では「吉次」と書くのが一般的です。魚の大産地では加工業も盛んになりますから、塩釜や石巻などを抱える仙台付近では、かまぼこがたくさん作られているのです。現地のメーカーに聞いたところ、かまぼこには小型のキチジを使っているそうです。

キチジは、駿河湾以北の本州や北海道および千島列島の太平洋側、オホーツク海南西部に分布しています。中でも北海道と東北の太平洋岸に水揚げが集中しています。日本海側には残念ながらいません。都道府県別漁獲量の上位ベスト4は1位が北海道、2位が青森、以下は3位岩手、4位宮城の順です。かまぼこの原料は、スケトウダラが圧倒的に多いのですが、「よい白身魚を加えるとすごく味がよくなる」と、鶴岡市内のかまぼこ屋さんが言っていました。

この辺では捕れないので、キチジの食文化はありません。それでは、産地ではどのようにして食べているのでしょうか。北海道の斜里町の漁師料理に湯煮というのがあり、塩を入れたお湯にキチジを通して食べるのだそうです。ハタハタの湯上げに似た料理かもしれません。サケのようにちゃんちゃん焼きにしてもすごくおいしい魚らしいです。宮城県では空揚げや塩ふり焼き、煮付け、青森では刺し身にもするそうです。

11月から1月にかけてが旬ですが、それ以外の時期でも脂が乗っていて、タンパク質より脂が多いという珍しい魚です。でも健康に悪い脂ではなく、サバやサンマなどの青背魚と同等かそれ以上のEPAやDHAが含まれています。つまりおいしくて体にいいということになります。動脈硬化や心臓血管障害、脳血管障害を抑制する働きが期待できます。ビタミンEも豊富で生活習慣病の予防にもつながると思います。

深海魚で目が大きく体が赤いのがキチジの特徴です。庄内浜では捕れません

キチジは、水深200~600メートル付近にすむ深海魚です。成魚は、体長30センチぐらいで重さ1キロほど。季節で多少の移動はしますが、回遊はしないので根魚と言えます。オキアミや、オキアミを餌にしているエビを食用にしています。大正時代のころは1日の操業で船がいっぱいになるほど捕れたそうですが、現在は資源自体が少なくなり、危機に陥っています。

大正から昭和初期は食用ではなく、肥料用だったそうです。この辺でも最近、お店に並ぶことがあります。値段を見て驚くと思います。前回、取り上げたノドグロと同じぐらいの価格かもしれません。私は北海道でキチジの煮付けを食べましたが、とてもおいしかったです。体が赤いので、おめでたい魚として食べるところもあるそうです。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年1月24日付紙面掲載

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