読者から「光り物、青物と言われる魚全般が好きですが、アジの刺し身はおいしくて安いのでよく食べます。年間を通して店頭に並んでいますが、旬の時期、おいしくない時期はあるのでしょうか。鮮度の見分け方、刺し身やたたき、焼き物以外にもおいしい食べ方があれば教えてください」という質問をいただきました。
アジと言えば、一般にはマアジを指しますが、アジにはほかにもいろんな種類がいます。世界にはアジの仲間は13種類いると言われています。国内を例にとると、メアジ、ムロアジ、マルアジ、アカアジといったところでしょうか。でもこの辺ではマアジ以外はほとんど流通していません。食べ慣れていないので食文化もないということもあるでしょう。図鑑の中でしか見ることができないと言ってもいいかもしれません。
アジ全体の特徴としては、体の側線上に「ぜいご」という硬いうろこのようなものがあります。一般に春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。このように多くのアジは回遊魚です。マアジの中にクロアジと呼ばれるアジがいます。やはり季節によって回遊します。名前の通り体の色が黒いのが特徴です。これに対し、回遊しない根付きのものを通称・キアジと呼び、クロアジよりもおいしいとされています。
アジの旬は全国的には夏と言えると思います。今なら富山のアジは脂がのっています。大分県の関アジのように年間を通して脂ののりがよい根付きのものもいます。では、栄養価はどうかというと、アジは青魚、つまり青背魚でありながら、成分は白身魚に近いのです。
アジの名の由来は、「味がよい」、つまりおいしいから来ていると言われています。都道府県別の漁獲量をみると、1位が長崎、2位が島根、3位が茨城の順です。有名な関アジが捕れるのは、大分県の佐賀関と愛媛県の佐田岬の間にある潮流が速い海域です。佐賀関港に水揚げされたものを関アジ、愛媛の佐田岬漁港に揚がったものを岬(はな)アジと呼んでいます。同じ海域で捕れたアジでもブランド名が違うわけです。価格はもちろん、関アジの方がはるかに高いのです。
鮮度の見分け方をお話ししましょう。目の色がクリアで透明感があり、身に張りがあり、さわってみて硬さがあるものを選んでください。食べ方では、骨を丁寧に取り除けばフライもおいしいし、臭みも全然ありません。青背魚ですから酢締めも合いますし、天ぷらにしてもいいです。ただ、家庭で三枚におろすことを考えると大変な作業かもしれませんが…。南蛮漬けにすると骨まで食べることができるそうです。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年3月20日付紙面掲載