読者から「3カ月ほど前、地元の回転ずしでハタハタのにぎりを食べました。以前、刺し身で食べるのも可能だとこのコーナーで紹介されていましたが、現物を初めて見てびっくりしました。庄内でも食べるようになったのでしょうか」という質問をいただきました。
ハタハタは近年、通年で水揚げされるようになりました。でも、一年を通してすしだねとして使うのは無理だと思います。
ハタハタは、白身魚に分類されますから、すしにするには脂がのっていないといけません。そして鮮度も求められます。この2つのハードルをクリアしないと、すしに使うのは難しいでしょう。
9月になると、2カ月間休んでいた底引き網漁が再開され、そこでハタハタが水揚げされます。でも、まだ暑い時期なので、市場に届いた時には鮮度がよくても刺し身にするにはあまりいい状態ではないと思います。皮もむきにくいはずです。ハタハタには、うろこがほとんどありません。キスより処理が楽なようですが、皮をひくのが難しく、刺し身にするのはキスより手間がかかるそうです。
うちの社長が以前、地元のスーパーに「刺し身で出してみたらどうですか」とおすすめしたら「あたるからだめだ」と断られたそうです。水揚げ後の処理が難しいのかもしれません。
10月、11月のハタハタは脂がのりおいしい時期です。年が明けると脂が抜けてしまいます。そうなったら、秋田の郷土料理であるハタハタずしにするのがいいでしょう。ハタハタずしは、米麹(こうじ)を使って発酵させた飯寿司(いずし)の一種です。
今の時期、ハタハタは庄内でも捕れますが、鳥取や山口など山陰方面のものがおいしいのです。なぜかと言うと、えさの関係です。ハタハタがホタルイカを食べておいしくなるのです。
では庄内ではいつごろからおいしいハタハタが捕れるのでしょう。答えは6月ぐらいからで、やはりホタルイカが関係してくるのです。そのころに水揚げされたハタハタのおなかを開くと、ホタルイカが残っている時があるのだそうです。魚はおいしいえさを食べている時期がおいしく、おなかに子を持つとあまりえさを食べなくなるのです。
ハタハタの都道府県別の水揚げ量について調べてみました。1位が兵庫県、2位が鳥取県で、本場の秋田県は3位、そして北海道が続きます。皆さんは、トップが秋田県でないことに驚いたのではないでしょうか。実は私も秋田が1位と思っていたのでびっくりしました。兵庫と鳥取は、日本海の漁場にハタハタのえさが豊富にあるのかもしれません。
秋田ではハタハタを「雷魚(かみなりうお)」とも呼びます。冬が訪れ雷が鳴り、海が荒れるころになると来遊するところから来ているようです。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年3月28日付紙面掲載