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アサリに似たコタマ貝

読者から「春はハマグリやアサリなど貝を食べる季節という感じがします。子供のころ、海水浴場で泳ぎながら貝を採った記憶があります。あの貝はなんだったのか思い出せません。庄内浜でアサリは採れますか。アワビやサザエのほかに地元で採れる貝でおいしいものがあれば教えてください」という質問をいただきました。

スーパーのチラシに「貝まつり」などと載っているように、春から夏にかけておいしい貝はたくさんあります。この時期がアサリやハマグリの旬に当たるという地域も多いのです。いい物が入るため、売り手側にとってもアピールしやすく、皆さんも貝の季節と感じるのではないでしょうか。

庄内浜ではアサリもハマグリも採れません。アサリの産地としては宮城県や三重県が有名です。ハマグリはどうかというと、「その手は桑名の焼きハマグリ」で有名な桑名市がある三重県や千葉県が名産地です。10年以上も前の話ですが、「庄内産アサリ」が店頭で売られていました。庄内ではアサリが採れないはずなのにどういうことでしょうか。実はコタマ貝というアサリそっくりの貝だったのです。今は資源が少なくなりましたが、コタマ貝は庄内浜の砂地にも生息していました。それをアサリの名で販売していたのです。

でも近年、商品の表示に対する規制が厳しくなり、アサリという名前では売ることができません。質問をくださった読者の方が海水浴場で採った貝はこれだと思います。今ならアサリではなく、本来のコタマ貝の名で販売されていると思います。覚えておいてください。

アサリは庄内浜では採れません。北海道産のアサリ(上)と千葉産のハマグリ(下)です

コタマ貝の特徴についてお話ししましょう。外観は見分けが付かないほどアサリに似ていますが、加熱するとアサリと違い、身の色が赤みを帯びるのです。みそ汁にするとおいしく、アサリ、ハマグリと同じような食べ方ができると思ってよいでしょう。私もこの業界に入るまではコタマ貝をアサリと呼び、海で採って食べていました。

コタマ貝のことを調べているうちにおもしろい話を見つけたので紹介します。1983年に秋田県を襲った日本海中部地震の後、秋田県内の砂浜でコタマ貝が大発生したそうです。新潟地震の時には庄内浜でアマダイが大量に水揚げされたといいます。地震の地殻変動が海産物にも影響を与えたのでしょうか。

漁協に聞いた話ですが、庄内では昔からコタマ貝をアサリやハマグリと呼んだそうです。

庄内浜はどんどん春らしさを増しています。タコ、フグ、アジ、サゴシ(小さいサワラのことです)などが捕れ始めています。由良港で今月2日、サクラマスが200箱以上水揚げされ、浜は大変にぎわいました。波が高い日が多く、底引き網船がこのところ出ていません。今週はエビに期待しています。次回も貝の話を続けます。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年4月8日付紙面掲載

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