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地域情報化の未来像を探る 地域情報化フォーラム

情報社会における地方の目指すビジネス展開(8)

多摩大学情報社会学研究所所長・公文俊平氏
講演する公文氏の写真

今、私たちは情報化時代のための憲法をつくるべきであります。現在、日本でされている憲法論議はすべて、戦後の日本がやり残した宿題をどうするか、という観点からなされています。あるいは、これまでの第二次産業革命の観点から事態をみて、「競争だ、構造改革だ」「いや、改革はやりすぎだ。もっと福祉が重要だ」などとやりあっている。しかし、中心的な問題はそんなことではありません。例えば、本当に地方分権を考えるならば、今のような国家のつくりではなく、連邦国家にして地方に主権を渡すとかです。今の憲法は戦後すぐにつくられたものですから、未来の世代に対する配慮とか、環境に対する配慮はほとんど何もありません。自分たちが生きていくのに精いっぱいだった時代に理想を考えたのが今の憲法だからです。しかし、現代の私たちは未来の世代に十分な権利を認めなくてはいけません。未来の世代に対して良い環境を引き渡す義務があるということを憲法としてうたう。情報社会というならば、産業社会がこれまで考えてきたような著作権といった種類の権利ではない、別の種類の権利を情報や知識に対して構想し、確立する必要があるのです。そういうことを盛り込んだ憲法をつくって、これからの時代に備えるというのは望ましいことではないでしょうか。

そして、エネルギーや食糧の自給率増加に本気で取り組もうということを地域でお互いに約束し、努力をする。自分たちの地域の歴史を見直し、その中に未来のためのモデルがあるかどうかということを考えてみる。庄内には徂徠学の伝統があり、日本的近代を築き上げるための哲学として今日にも通用する面白いものを持っているらしいのですが、こういったものを庄内から発信し提言していく。あるいは、幕末から明治への近代化の過程で、庄内が西の勢力と対決しながら、他方で西郷隆盛と手を結び、初期はうまく進んだ。しかし、西郷が没落するとその煽りを受けたとか、こういう歴史のドラマやダイナミックスを見直して、歴史の中に新しい時代を運営していくための何かヒントになるような手がかりを発見し、そういうものを小説や映画にすれば非常に面白いと思います。

私の出身地・高知県では50年ほど前に「よさこい鳴子踊り」を作りまして、これが現在全国的に普及しているのですが、あれは今日の言葉で言えば「オープンソース」の典型的な例です。つまり、「よさこい鳴子踊り」には決まった踊り方はありません。「鳴子」を手に持ち、歌のどこかに「よさこい節」の一節が入っていれば、あとは全部自由にしていいのです。誰がどういう風に変えてもいいので、その全部を「よさこい鳴子踊り」と認める。さらに「ソーラン節」と連携して、「よさこいソーラン」も結構です、ということで非常に広がったのではないかと思います。自分の地方にあるものをオープンにして広げていくことで知的な名声、情報的な大義を持つという、方向性にも希望が持てるのではないでしょうか。

大きく見て、これからの日本の30年は、戦後の高度成長過程や明治後期の国家的発達の過程に匹敵する可能性を持った局面に入ると私は見ています。2005年ごろが底でした。その60年前の敗戦の年がその前の底でしたし、明治19年には内閣制度がつくられましたが、西南戦争が終わって明治憲法ができたあたりが一つの底でした。いまは3度目の底を通り過ぎたところですから、われわれは努力すればこの後何十年かは相当面白い発展をする時期にさしかかっています。第二次産業革命の落とし穴にはまらないで、次の発展の可能性はどこにあるのか、そのための戦略が何であるのかということを考えていくならば期待は十分持てると思います。

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公文 俊平 (くもん・しゅんぺい)
わが国の情報社会学会の創設者。経済企画庁客員研究官、東京大教養学部教授、国際大グローバル・コミュニケーション・センター所長、代表など歴任し、現在は多摩大情報社会学研究所所長。
>> 多摩大情報社会学研究所
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