「また今度もナスか」と思う読者もいるかもしれない。このコーナーで何度もナスを取り上げてきたが、今回はちょっとほかにはない珍しいものだ。
「変なのばっかり持ってくると、いつも言われているんですよ」。酒田市の「ヨッテーネ」に野菜類を出荷している白畑ちか子さん=大町=が愉快そうに話した。
白い線が入ったマダラ模様のカプリス、緑色の白神なす、そして白ナスの白玉くん。確かに白畑さんが栽培しているナスはユニークだ。
「白玉くんは遊佐町の白ナスとは品種が違います。白神なすは秋田県内の直売所で見たことがあります」。今回は、ほかの直売所では読者の皆さんも見ることがないだろうカプリスを取り上げる。
カプリスは「紫色まだら」とも呼ばれる。イタリア生まれで、「体形」は日本の米ナスに近いずんぐり型。縦にいくつも白の線が入り、紫色と白のまだら模様。持ってみると見た目より重い。「せっかく植えるなら楽しみながらやりたい」と通信販売で種を取り寄せ、今年初めて植えてみた。
春に種をまき、6月に定植、8月に入って収穫が始まったが、「まだぽつぽつというぐらい。週1、2回、数個をヨッテーネに持っていく程度」とピークはこれから。「ほかのナスも使ってもらっている」という自宅近くのフランスレストランにも「出荷」している。
そのレストランのシェフの奥さんが高校の同級生という縁で、料理法についてアドバイスも受ける。そのシェフがカプリスをどう料理したのか。解答は「簡単でちょっとおしゃれでおいしいやつ、と教えてもらいました」というおすすめレシピのごまだれ煮だった。
フランスレストラン仕込みの味をさっそくいただいた。皿に載ったナスはボリューム感があり、真ん中に置いたへたの部分が彩りを添える。口に入れてみると、外観では厚そうだった皮が気にならない。「食感も米ナスに近いようです」と白畑さんが言うのもうなずける。ごまだれとの相性もいい。ナスの料理なのに豪華な一品といった感じだ。
「なべ焼きよりわが家ではこちらの方がヒットしました。ミートボールと煮込むクリーム煮はおばあちゃんに好評でした。グラタンもいいですよ」とにっこり。「中身をくり抜いてみそ炒めにし、外側を器にして盛り込んでみたらきれいで、評判もよかった。来客時向けです」。作り手の「遊び心」が野菜と料理の両方から伝わってくる。
白畑さんを訪ねる前、ヨッテーネをのぞいてみた。カプリスはなかったが、常連客の女性が「私この前買った。みそ汁にして食べたけど、おいしかったよ」と教えてくれた。
わが家でも厚く切り、ベーコンとソテーにしてみた。切り口を見た家族が「サツマイモみたい」とびっくり。火の通りが思ったより早い。重厚とでも言えばいいのか。甘くて「実汁」もたっぷり。だからジューシーでおいしい。今度は素揚げも食べてみたいと思った。
白畑さんのカプリスは1個50円。ヨッテーネで販売している(日曜は休み)。
カプリス1本、ベーコン2枚、調味料(すり白ごま20g、水200㏄、めんつゆ30㏄、でんぷんかかたくり粉10g)
メモ たれに鶏のひき肉を入れてもOK。ナスの皮のせん切りを油で揚げ、飾りに載せると彩りがよい。
2007年9月1日付紙面掲載