0歳の赤ん坊にはWeb空間は使えず、成長するに従いWeb空間を体験するようになりますが、ある成長段階までは現実空間の占める圧倒的に割合が高い。そうした中で子どもの記憶は、現実空間としての地域を巡るものとなるということです。郷土意識という記憶において人々と地域はがっちり結びついていて、地域が何かあったら戻るべき場所となり、また、自己アイデンティティーの根拠ともなるものです。
このように郷土意識を大事に考えたときに、今の都市づくりのあり方や、学校のあり方といったものが、大人の目線から合理的に行われているだけで、子どもの目線による郷土づくりという観点から行われていないということがはっきり指摘できます。地域が育む子どもが心の中で堆積させる記憶というものをわれわれ大人が考えながら、町をつくり、さまざまな施策を打たねばならないと思います。
もう一つは、もう少し現実的なものです。Web空間は第2の活動の場であり、これと接続することは活動を活発にしていくうえで何よりも大事です。先ほどお笑い島計画をご紹介しましたが、ただWeb空間と接続すればいいのではなくて、直面する問題を自分で解決するという考えで、自身なりの道具をつくっていくことが大事だと思っています。その中でWeb空間との接し方がわかるのだろうと思います。出来合いのものをお金で買うのでもなければ、借りるのでもなく、「自分でメディアをつくる」とお考えいただければいいと思います。家族も、企業・団体も、自治体も、学校もそうですが、自らメディアをつくり、さらにそのメディアとメディアをつなげていくことができれば良いですね。
最後の提案ですが、「われわれの賢い消費選択によって経済的な自立を目指していく」ということです。地域経済圏は失われてしまいましたが、極端な話、庄内に国境を引こうということになれば、ジャスコが出店するためには現地法人をつくらなければならないでしょうし、貿易も始まり、東京の収奪も減ってくるはずです。こうした単純な思考実験から入って、例えば、ある圏域に限ってクーポンを発行し、小さな経済圏を作ってみようと考えてみます。
先ほどお金の循環の話をしましたが、放っておけばお金は地域で3周くらい回るわけですが、ジャスコで買い物すると1周しか回らない。地域にとって、1周回るのと3周回るのでは全くお金のありがたみが違いますし、多少高くても地元の商店街で買い物するという発想が生まれます。そこで、回わる回数によって価値の付け方を変えるというそれを後押しする仕組みを作ることが考えられます。
同じように、環境に優しい消費についても価値を変えていくことも考えられます。もちろん安くて、品ぞろえ豊富で、品質が良いというこれまでの消費選択のあり方も残しつつ、こうした触媒のような仕組みをWeb空間を利用して作れば、われわれが賢い消費者になり消費選択した結果として、地域経済を再生することが可能になります。
お聞きしたところ、庄内は比較的強い統合性が残っているのですね。漁協が1つになっていたり、農協が大きな固まりになっていたり、市町村合併がうまくいったり統合の力はあるということをお聞きしました。
庄内では、そのような地域性を生かし、また、庄内という範囲で地域経済圏を想定して、そして何よりも情報化に目配せしながらさまざまな取り組みを進めていくことが重要です。こうしておのずと地域が変わっていくと思います。
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