2024年12月3日 火曜日

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藤沢周平書籍作品あれこれ

ふるさとへの熱き思い(中)

藤沢さんの作品は大きく分けて、海坂藩物といわれる士道物、江戸庶民を書いた市井物、新井白石や清河八郎等を書いた史伝物があり、46歳から69歳までの20数年間に、長編・短編合わせて200余作の膨大な作品を残されました。よく藤沢さんの作品は破綻がなく、どの作品も非常にきっちり整っており、職人芸のうまさがあると言われています。今回はその中で海坂藩物についてお話しいたします。

海坂藩は、北の方の小さな藩で、藤沢さんが作り出した架空の藩です。三方を山に囲まれ、一方が生みに開けている藩、7万石から荘内藩と同じ14万石位の小さな藩です。そして町の真ん中を五間川が流れて多くの橋が架けられ、大手門を出ると千鳥橋の袂には剣士が隠れており、下城する家老を待ち受け切りかかるというような場面が多く出てきます。ここでは、五間川が大きな役目を持っています。

海坂藩と荘内藩が重なる2つめは美味な食べ物。先ず漬け物の民田茄子に口細の小鰈、茗荷の酢漬、鱈汁、蟹の煮物と庄内の味覚が登場します。『三屋清左衛門残日録』には特に食べ物の場面がよく出てきます。多分藤沢さんも鶴岡を思い出しながら書いたのでしょう。3つめの共通点は、剣士、剣の達人が登場することです。ただし、登場する剣士は100石以下の武家のニ、三男が多いのです。冷や飯喰いといわれ、パッとしない人物が、実は剣の達人であるという設定が多いのです。その他に、藩の権力闘争も作品のテーマとして出てきます。『暗殺の年輪』から『静かな木』に至るまで、このテーマは繰り返し登場します。

「ふるさとへの熱き思い(下)」へ続く 

(首都圏つるおか会総会記念講演より)

(筆者・松田静子/鶴岡藤沢周平文学愛好会顧問)
海坂かわら版
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