2024年12月3日 火曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

藤沢周平書籍作品あれこれ

鶴岡と新座の接点

海坂藩について

藤沢周平さんの時代小説には「海坂藩」という藩が登場します。直木賞受賞作の『暗殺の年輪』に登場して以来、大方の武家ものの作品はこの「海坂藩」が舞台となっております。『蝉しぐれ』や『三屋清左衛門残日録』など長編短編、数多くの作品があります。その海坂藩は、もちろん、架空の藩ですけれども、モデルというか、作者の心の中で基盤となっていたのは、荘内藩だと思われます。海坂藩は北国で、江戸まで120里の道のり。三方を山で囲まれていて国境を形成し、一方に海がひらけている。東の山には信仰を集めている修験場の山があり、南側には山脈が連なっていて、その山脈の終わりの丘陵地帯が海坂藩にもかかっていて、坂のある町になっている。海には漁港があって、朝のとれたての魚を浜の女たちがふれ売りに城下までやってくる。大きい港には米や紅花などを積む船が出入りし、豪商である廻船問屋が数軒ある。比較的水利事業も整って、田は美田が多く、秋には一面黄金波打つ農村風景がひろがっている、などなど。こうした地理的な設定は、荘内藩、また、現在の鶴岡市・酒田市とほとんど一致しております。

藩の内情は、比較的政治闘争が多く、執政が交代するたびに、下級の武士たちが右往左往させられ、中には命を落としたり、『蝉しぐれ』の主人公のように一家の崩壊の憂き目に遭ったりしますが、このような内紛はどこの藩にもあったことでしょう。荘内藩にも、こうしたゴタゴタの記録はたくさん残されていますので、参考資料としてはこと欠かなかったのではないでしょうか。このように地理的・歴史的な面においての基盤を、藤沢周平さんは生まれ故郷である庄内・鶴岡をモデルとして物語を構築していき、そこに人間を生活させ、その哀歓を描きました。いつの時代にも共通する人間の姿がそこにはあると思います。

「故郷へ寄せる想い」へ続く 

(新座市立栄公民館講演より)

(筆者・松田静子/鶴岡藤沢周平文学愛好会顧問)
海坂かわら版
トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field