2024年12月3日 火曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

藤沢周平書籍作品あれこれ

生徒とともに『蝉しぐれ』を読む(4)

◇生徒の感想文(例)

・Dさんの感想文

『蝉しぐれ』を読んでの感想は、最初国語の授業の時間に期末テストのかわりに蝉しぐれの小説を読んで感想を書くと言われた時、正直に言うと少し面倒だなと思いました。だから最初の授業の辺りでは、あまり気も進まず、ただ読んでいました。

しかし、何度か読んでいるうちに、この小説の面白さに気づきました。そして、また最初からこの小説を読みました。

この小説の裏表紙には、「淡い恋、友情、そして悲運と忍苦。ひとりの少年藩士が成長してゆく姿を豊かな光の中で描いたこの作品は、名状しがたい哀惜を誘わずにはおかない」と書いてありました。この文を読んだとき、自分がこの小説を読み終わったとき、どのような感想を持つのか考えられませんでした。

この小説は、文四郎という少年がふくという隣の娘が蛇に咬まれたのを救う場面から始まりました。

文四郎の家も、ふくの家も、特に貧しいというわけでもなく、暮らしていました。文四郎には、小和田逸平と、島崎与之助という生涯の親友がいました。この小説を読んで、本当の親友、友の在り方を知ることができたような気がしました。それだけでもこの小説を読んでよかったと思いました。

与之助は、飛び抜けて頭が良く、逸平は別に頭も良くないがとにかく明るい性格の少年でした。文四郎はというと、頭は良いわけではないが、剣の技術がかなりすごい少年でした。この3人は何でも相談にのれる仲でした。こんなに普通の生活をしていた人たちが、文四郎の父・助左衛門が反逆の罪で切腹させられたことにより、話は急転回していきました。与之助は勉強のため、ふくは仕事のため、江戸へ行き、文四郎は身分が下がり周りから反逆者扱いされました。それでも、友人関係が崩れなかったのがすごいと思いました。

この小説は、文四郎の嫌な出来事だけでなく、秘剣村雨、元服、身分が戻るなど、文四郎にとって良いことも書いてあり、良い事、悪い事のバランスが取れていて、そこに飽きない面白さがあったと思いました。この小説を読んで一番驚いた出来事は、ふくに殿様の手がついて出世するということです。米を借りに来ていたふくが出世するとは思いませんでした。

また、この小説で一番はらはらした場面は、里村家老から藩命を受け、だまされかけた所から、ふくとその子供をつれ、織部正さまの所に逃げ大逆転するところでした。この小説を読み終えた今、本を読むことが面白くなりました。裏表紙に書いてあった「哀惜を誘わずにはおかない」という言葉の意味が分かったような気がしました。

「生徒とともに『蝉しぐれ』を読む(5)」へ続く 

(筆者・松田静子/鶴岡藤沢周平文学愛好会顧問)
海坂かわら版
トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field