『蝉しぐれ』を読んでの感想は、最初国語の授業の時間に期末テストのかわりに蝉しぐれの小説を読んで感想を書くと言われた時、正直に言うと少し面倒だなと思いました。だから最初の授業の辺りでは、あまり気も進まず、ただ読んでいました。
しかし、何度か読んでいるうちに、この小説の面白さに気づきました。そして、また最初からこの小説を読みました。
この小説の裏表紙には、「淡い恋、友情、そして悲運と忍苦。ひとりの少年藩士が成長してゆく姿を豊かな光の中で描いたこの作品は、名状しがたい哀惜を誘わずにはおかない」と書いてありました。この文を読んだとき、自分がこの小説を読み終わったとき、どのような感想を持つのか考えられませんでした。
この小説は、文四郎という少年がふくという隣の娘が蛇に咬まれたのを救う場面から始まりました。
文四郎の家も、ふくの家も、特に貧しいというわけでもなく、暮らしていました。文四郎には、小和田逸平と、島崎与之助という生涯の親友がいました。この小説を読んで、本当の親友、友の在り方を知ることができたような気がしました。それだけでもこの小説を読んでよかったと思いました。
与之助は、飛び抜けて頭が良く、逸平は別に頭も良くないがとにかく明るい性格の少年でした。文四郎はというと、頭は良いわけではないが、剣の技術がかなりすごい少年でした。この3人は何でも相談にのれる仲でした。こんなに普通の生活をしていた人たちが、文四郎の父・助左衛門が反逆の罪で切腹させられたことにより、話は急転回していきました。与之助は勉強のため、ふくは仕事のため、江戸へ行き、文四郎は身分が下がり周りから反逆者扱いされました。それでも、友人関係が崩れなかったのがすごいと思いました。
この小説は、文四郎の嫌な出来事だけでなく、秘剣村雨、元服、身分が戻るなど、文四郎にとって良いことも書いてあり、良い事、悪い事のバランスが取れていて、そこに飽きない面白さがあったと思いました。この小説を読んで一番驚いた出来事は、ふくに殿様の手がついて出世するということです。米を借りに来ていたふくが出世するとは思いませんでした。
また、この小説で一番はらはらした場面は、里村家老から藩命を受け、だまされかけた所から、ふくとその子供をつれ、織部正さまの所に逃げ大逆転するところでした。この小説を読み終えた今、本を読むことが面白くなりました。裏表紙に書いてあった「哀惜を誘わずにはおかない」という言葉の意味が分かったような気がしました。