森崎 伸之 (山形県立日本海病院産婦人科医長)
最近の子宮がん、日本では発症頻度が高い子宮頸がん(子宮の下部)のトピックをご紹介しましょう。
「それまで生理も月1でちゃんとあったし、なんの症状もありませんでした。たまたま、足が腫れたので病院に行き、たまたま最近子宮がん検診開始年齢が20歳からですから念のために検査しておきますとのことで、検診をしてもらったら子宮頸がんが発見されました。症状が自覚できないって怖いですよね」。
これは、インターネット上で公開されていた、ある若い女性の告白です。今確実に、若い女性の間で子宮頸がんの発症が年々増えています。
実は、子宮頸がんはギリシャの昔からビーナス病などと呼ばれ性交経験のない修道女や尼さんには決して発生しないが、不特定多数の人と性交渉をもつ婦人や、そのような夫をもつ婦人には多く、性行為とかなり関連深いがんとされてはいました。ところがヒトパピローマウイルス(HPV)が性行為によって感染し、子宮自体のHPV持続感染者に子宮頸がんが非常に高率に発症することが、最近明らかにされました。つまり子宮頸がんは“腫瘍型の性感染症”であることがはっきりしたのです。がんが性感染症から創られるという事実は、医学的な大発見といってよいと思います。
ところで子宮頸がんの発症年齢が若年化していることも注目すべき最近の傾向です。性行動と子宮頸がんのリスクについて驚くべきデーターをご紹介しましょう。初交年齢が16歳以下だと、19歳以上に比べて16倍、初潮から1年以内に初体験すると、10年以上に比べてなんと26倍も子宮頸がんになりやすいことが報告されています。さらに、パートナーの数も、5人以上の女性は1人以内に比べて3.6倍子宮頸がんになりやすいということです。
若い女性に子宮頸がんが増えている理由は、性行為感染症であるHPV感染症が若年者に蔓延しているためであることは間違いない事実です。
子宮頸がんは定期的にがん検診を受けることで予防することができます。現在のところ子宮頸がん検診では細胞診のみの検査です。しかし、細胞診のみでは検診の精度にやや問題があり、さきに述べたように発症原因がHPV感染なのですから、細胞診とHPV検査を併用することで精度が上がると想像されますが、なんと検診の精度がほぼ100%になると考えられています。また細胞診の結果が現在のところ問題がなくとも将来の子宮頸がんの発症リスクも知ることができます。現に最新の米国の子宮頸がん検診のガイドラインでは細胞診、HPV検査の両方が陰性の場合は、その後3年間は検診の必要がないとされています。従って、日本でも、今後、子宮頸がん検診は、細胞診とHPV検査を併用する時代になることは確実です。