2025年1月8日 水曜日

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郷土の先人・先覚205 地域の発展と教育界に貢献

佐藤東次郎(嘉永4-大正2年)

宮野浦村(現・酒田市)の佐藤東次郎は、地域の産業振興と教育の発展に力を尽くした1人である。

宮野浦村は漁を業とする家が多く、いったん不漁となれば飢餓の恐れのある地域であった。そのため、東次郎は村民に砂丘地の開墾を勧め、雑穀や豆類を栽培させ、不慮に備えさせている。この事業は当初、村民の反対にあったが、東次郎の説得により明治20年に始まり、同25年に完成。開墾地は80余ヘクタールに達している。山形県は翌年にその功績を賞している。

東次郎は明治初年、自宅を教育の場に開放、本人と小川宮子が村内児童の教育の任に当たっている。東次郎が伊勢参りから帰る途中、東京で病気になり、その際、東京府士族の出である小川宮子が手厚く看病してくれた恩返しとして招へいしたものであった。なお、小川宮子は、同7年宮浦学校の教師に、同8年宮野浦を去って酒田町本町の操松学校の教師、同11年には山形師範学校教師となっている。

東次郎は教育に理解を示さない村民に対して、教育の大切さを説いた。明治7年宮浦学校が開校しても就学児童が少なく、設備も整わなかった。東次郎は田畑を売り払い、自分の屋敷に学校を新築して就学を勧め、自らも同年小学校仮教師手伝(月給2円)、同8年宮浦学校が袖浦学校と名を変えると小学校仮教師(月給3円)、同9年には五等授業生として教鞭をとっている。のちに学事委員になるが、教育への情熱を失わなかった。明治38年袖浦村(現・酒田市)の村長・加藤甚平はその功を賞している。

東次郎は同15年宮野浦十里塚村戸長に当選、同17年黒森村組合役場書記、同18年黒森村外四ケ所村戸長役場書記などの役職に就き、同21年1府9県総合水産共進審査委員に任じられている。

藤治郎家は、宮野浦村の草分けである佐藤藤右衛門の分家で、10数町歩の田畑を所有、さらに同18年に東次郎が船小屋、漁船、地引網など一式がついた納屋を271円余で譲り受けるほどの素封家であった。

東次郎は早くからサツマイモの栽培普及に努め、また、最上川河口でのしじみ貝の養殖、大根の栽培に力を注いだ。しかし、大根は販路先がなく失敗。この地方で東次郎大根として有名になったのは、品種改良によるものか、失敗して米の代わりに売れない大根を食したことによるものかはっきりしない。

(筆者・須藤 良弘 氏/1990年5月掲載)
※原稿中の地名や年などは紙面掲載当時のものです。

プロフィール

佐藤 東次郎 (さとう・とうじろう)

農漁業家。嘉永4年6月28日、藤治郎の長子として宮野浦村に生まれる。幼名・豊吉、のち友吉、明治元年に父が亡くなり、5代目藤治郎に。教育の功によって酒田県参事・松平親懐に東次郎の名を受ける。研長に陳情に行った際、当地方で「ケデ」と称している和船のいかりを漢字ではどうかと問われ、木と石を組み合わせた新語を作るほどの博識があり、心優しい人柄であった。晩年、酒田船場町の海運会社の帳場に勤め、手先の器用さを発揮、飛島港の見取り図を書いている。大正2年3月21日、63歳で亡くなった。

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