「就農した2年前、ミニトマトの栽培に取り組みました。自分に合った作物だと思います」。鶴岡市白山のJAグリーン鶴岡店産直館に有機栽培のミニトマトを出荷している齋藤徳文(なるぶみ)さん=面野山=が胸を張った。
父親の徳夫さんは稲作とメロンを両輪に据えた農業経営を続けていた。会社勤めをやめ、農業の世界に飛び込んだ徳文さんは父親と違う作物を選んだ。1年目は品質、収量とも満足のいく出来だった。自信を深めた2年目、徳夫さんが体調を崩して入院。徳文さんは、ミニトマトの作付けを拡大した。
ホップ、ステップと続いた3年目の今年、さらなる飛躍を期して大玉トマトとミディと呼ばれるフルーツトマトにも挑戦した。産直施設には徳夫さんの名前で出荷している。
「ミニトマトの特徴は」との質問に「自分では分かりません。食べて感想を聞かせてください」という答えが返ってきた。
テーブルに並べられたミニトマト、大玉トマト、中間サイズのミディを試食してみた。フルーツトマトの名の通り、ミディは甘さがきわだち、大玉は酸味を感じる。そして徳文さん自慢のミニトマト。口に入れた後、甘みがじんわり広がった。取れたてだけにみずみずしい。
「酸味か甘みかどちらが好きかで好みが分かれると思います」と話す徳文さんだが、ミニトマトの選び方について「色が赤くてつやのあるものが熟していておいしい。完熟してから収穫したものは糖度ものっています」と説明する。
生食以外では「パスタやピザに入れてもいいです。ミニトマトは今の時期なら冷製パスタに合います」。そして「変わったものでは串焼きトマト。ウインナーや鳥のささみと一緒に焼いて食べる。塩味でもいいですが、とろけるタイプのチーズを使うと、よりジューシーになります。バーベキューが好きなので、庭でもやります」と教えてくれた。
串に刺すところから始めれば子どもも喜びそうだし、ビールのつまみにもいい。今年の夏はわが家もこれでいこうと思った。飲み過ぎた翌日はみずみずしい生のミニトマトもおいしそうだ。思ったことを口にすると「それが一番ですね」と白い歯がのぞいた。
七窪のハウスに連れて行ってもらった。曇りの日だったので内部はそれほど暑くない。「ブーン」という音が聞こえる。「ハチを使って交配させているんです」。梅雨が明けるとハウス内の気温は40度を超える。「首にアイスパックを入れたタオルを巻いて収穫します」と笑った。
収穫時にはほぞが取れたミニトマトが多く出る。味は変わらないが、規格外になるため農協には出荷できない。産直館では「はじき」として8、9個入り1袋65円という低価格で販売している。日吉町にある産直館駅前店、新形町の野菜ランド「よれちゃ」でも買うことができる。
取材を終え帰ろうとしたら「どうしても言いたいことがあるんです」と真剣な表情で話し始めた。「レストランやスーパーとの契約栽培もやってみたい。販路を広げて、自分の作るトマトをいろんな人に食べてほしい。連絡を待っています」。若い農業者のチャレンジは続く。
ミニトマト、ウインナーソーセージ、鳥肉ささみ、とろけるタイプのチーズ、塩
【メモ】 塩だけでもおいしい。とろけるチーズを使うとよりジューシーになる。
2006年7月8日付紙面掲載