2025年4月6日 日曜日

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地域情報化の未来像を探る 地域情報化フォーラム

地域情報化におけるテレワークの役割と可能性(2)

ワイズスタッフ代表取締役・田澤由利氏
講演する田澤氏の写真

こういう良いことは実はみんなにとってもハッピーをもたらします。個人では、「家族との時間が増える」「子育て中でも仕事ができる」「通勤ラッシュからも解放され健康にもいいかもしれない」「自分の時間が持てる」などです。一方、会社にとってのメリットは「固定経費が削減」できます。家で働いたり出先で働いたり場所は問いませんが、とにかくきちんと働いてくれさえすれば、社員が増えても建物を増やす必要もなければ、机を買う必要もないわけですね。いろいろな固定費が削減できます。通勤しなければ通勤費も持たなくていいわけです。

「人材確保」という面もありますね。夫の転勤で辞めてしまう有能な女性社員が転勤先でも働くことができれば会社としても人材を確保することができます。最近、企業で大きな問題となっているのは、心の病を抱えている社員が多いということです。恥ずかしい数字なのか表になかなか出ませんが、聞いたところでは、従業員5万人の企業で約4%が心の病気で休職しているというデータもあります。これは会社にとって非常にマイナスです。ですから社員の健康維持でテレワークみたいなことができるというだけで「企業イメージのアップ」ができます。いいことづくめなわけですね。

さらに国や自治体にとっての良いこともあります。「地域の活性化ができる」「再チャレンジができる」「交通面でが削減できる」「労働力の維持」「生活の向上」と良いことがたくさんあります。そういってしまうと「そんなうまいこといかないよ」と思われると思いますが、デメリットももちろんあります。しかし、みんなで一生懸命テレワークをしようとすれば、こんな夢のような世界が待っているかもしれないんです。私一人がテレワークはこんなにいいんです、と頑張ってもだめなんですが、国が企業が、いろいろな人がテレワークをやりだすと世の中が変わるかもしれないし、実際に変わり始めています。

テレワークは説明したように、離れた場所で働きます。家で仕事するだけだろうと思われるかもしれませんが、定義があります。「ITを活用して、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方を週8時間以上する人」はテレワーカーといいます。1週間8時間働くとして約40時間ですから、週に1回だけ会社以外のところでパソコンなどを使って仕事をしていたらテレワーカーなんです。そういう定義を国がしています。この定義で国土交通省が2005年のテレワーク人口推計を調べてみたら、労働者の10.40%、つまり10人に1人はテレワーカーだという結果が出ました。こうした定義ではそういう結果が出るということです。つまり、ずっと家で働くというものでなくても、単に出張先の支店で働くとか、出先でパソコンを使って仕事をしていたらテレワーカーになってしまうわけです。この定義を頭の中に置いていただいた上で、政府が現在テレワークに非常に取り組んでいるという話に入りたいと思います。

2006年の安倍政権所信表明演説の中に「テレワーク人口の倍増を目指す」という言葉が入りました。これを受けて、「テレワーク推進フォーラム」というのが総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の関係4省と大企業が集まってできまして、テレワークを推進していこうと動き始めました。それで2007年4月に日経新聞のトップで大きく取り上げられましたが、松下電器産業が約3万人を対象に在宅勤務制度を導入することを決めました。松下電器という日本を代表する大企業が「職種を限定せず、希望する生産労働者は家で週1、2回仕事をしてもいい」という仕組みをつくり実行したんです。これは結構衝撃的でした。それを追いかけるように、今度は総務省が、職種を制限しないでテレワークの利用対象者を2000人に拡大しました。

そんなことで世の中が動き始めたのが2007年の春ごろからです。そして5月に「テレワーク人口倍増アクションプラン」というのが示されました。実際の活動計画を示したものがアクションプランです。「放っておいてもテレワーク人口は増えるだろうが、支援政策をするなどして国を挙げて頑張って2010年までに労働者の2割をテレワーカーにしよう。5人に1人がテレワークしているという社会を2010年までにつくります」と、国は目標値を立て、行動計画を出したということになります。本気で取り組むわけですね。

テレワーク人口倍増アクションプランの発表会の時には私も東京まで行って聞いてきたんですが、内閣府の担当者が「なぜ国がこんなにテレワークに力を入れるのか。皆さん分かりますか?」と問いかけていました。答えは簡単なんです。その担当者は「日本は少子化です。ここ数年一生懸命少子化対策をしてきました。たとえ出生率が上がったとしても、赤ちゃんが労働力になるには20年か30年かかる。そうすると20~30年の間は日本は労働力不足になることは間違いない。外国人の労働者を入れるとか労働力を創出するいろいろな施策はありますが、一番は働きたいけど働けない人に働いてもらうことです」と解説されていました。働きたいけど働けない人にテレワークという働き方で労働してもらい、労働力の減少をくい止めようというのは本当に国の指針なんです。

「地域情報化におけるテレワークの役割と可能性」(3)

◇     ◇

田澤 由利 (たざわ・ゆり)
テレワークにおける「ネットオフィス」構想の推進者。
98年、北海道北見市にワイズスタッフを設立。地方在住者、高齢者、障害者も「ネットで働ける社会」の実現を目指し、テレワークの普及に取り組んでいる。
>> 株式会社 ワイズスタッフ(Y's STAFF)
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