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ちょっと気になる診療科

人工膝関節置換術(整形外科)

針生 光博 (県立日本海病院整形外科医長)

針生光博氏の写真

人工膝関節置換術は1950年代から行われ始め、形態や材質の改良、手術手技の進歩により成績は安定し、現在日本では年間4万件以上の手術が行われています。

膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨から構成された関節で、骨の表面は軟骨で覆われています。歩行時には体重の1.5~2倍、階段を下りる時には3倍以上の負担がかかります。変形性膝関節症や関節リウマチなどで軟骨がすり減り、骨が削れてしまうと膝関節がスムースに動かなくなり、痛みのために体重がかけられなくなります。治療はまず薬物療法、理学療法、装具療法などの保存療法を行います。保存療法で効果が得られず、関節破壊が高度で痛みのために歩行などの日常生活に支障をきたす場合、人工膝関節置換術の適応となります。人工膝関節置換術は変形性膝関節症と関節リウマチが95%以上を占めており、女性が圧倒的に多くなっています。人工膝関節は破壊された関節面を切除して金属(コバルトクロム合金、チタン合金)をはめ込み、金属間には超高分子ポリエチレンを挿入し膝がなめらかに動くように工夫されています。膝蓋骨の関節面は状態によって超高分子ポリエチレンをはめ込みます。人工膝関節には片側のみ取り替える単顆置換型と全体を取り替える全置換型がありますが、状態によって選択されます。

人工膝関節置換術は術後20年間経過しても90%を越えるきわめて良好な臨床成績が得られています。耐用年数から60~65歳以上の方が主に対象となります。しかし、関節リウマチなどで日常生活に大きな障害がある比較的若い人に対しても、質の高い生活(Quality of life)を目的に手術を選択する場合が増えてきました。また超高齢の方(日常生活動作が自立)でも検査にて麻酔、手術に大きな問題がないと判断された場合は対象となります。

数年前よりできるだけ小さい切開で手術を行う最小侵襲手術法が考案され行われるようになってきました。関節や筋肉に対する侵襲が小さくなるので、機能回復が早くリハビリテーションが進みやすくなります。ただし状況によっては大きく切開した方が良い場合も少なくありませんので、より良い方法を選択して行っています。

リハビリテーションは手術後1~2日目から始め、膝を動かす訓練、筋力訓練、歩行訓練などを行い、バランスや可動域を回復させ、杖もしくは独歩で退院となります。入院期間は約2~3週間です。

手術の合併症は、人工関節の改良、手術手技の進歩などによりとても少なくなりましたが、感染、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症、人工関節のゆるみなどが起こる場合があります。すり減ったりゆるんだりした場合は、新しい人工関節と入れかえる手術が必要となることがあります。

人工膝関節置換術の最大の利点は、痛みのない日常生活をおくれるようになることです。痛みがなくなれば自由に外出できるようになり、健康で快適な生活を取り戻せます。ただし痛みがなくなり快適な生活をおくっていても、人工膝関節は気づかないうちにゆるみなどの問題を起こしている場合がありますので、定期的に検診を受けることが大切です。

2008年2月12日 up

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