麻薬の使用に対し、患者や家族に「中毒になっては困る」との不安は強いようですが、医師の指導のもと、がん患者が使う医療用麻薬で中毒になることはありません。また、医療用麻薬を使用した方が、十分眠ることができ、食欲も増し、健康状態がよくなり、結果的に余命が延びるとのデータもあります。
がんが早期か、進んでいるかにかかわらず、苦痛を和らげるそれが【緩和ケア】です。
「がん患者の痛みや苦痛、不安を取り除くのが緩和ケア。終末期医療ではない。でも、その誤解を取り除くのが難しい」。緩和ケアサポートセンター鶴岡・三川センター長を務める荘内病院の鈴木聡外科主任医長が苦笑いする。緩和ケアについて鈴木医長は「発症の時期から末期まで、患者さんと家族の体と心、生活をサポートし、優しい医療を提供していくこと」と解説する。
鶴岡・三川地域を対象に、荘内病院、かかりつけ医などの医療機関、訪問看護ステーションなど地域全体で支えていくプロジェクトがスタートしたのが平成20年4月。厚生労働省から全国4カ所のモデル地域の一つに選ばれ、3カ年事業で緩和ケア普及に向けたさまざまな試みや市民向けの啓発活動が展開されている。
この2年を鈴木医師は「地域全体で緩和ケアに取り組む下地ができ、医療連携もよりスムーズに進むようになった」と振り返る。一方で頭を悩ませている問題もある。医療用麻薬(モルヒネ)に対する誤解だ。
「モルヒネは最後の薬ではないし、がん治療やそこから派生する痛みを緩和することができる優れた薬」と有効性を力説。「一度使えばやめられないというのは間違い」とその効果と安定性を説く。
がん患者とその家族が悩みや心身の痛みを共有し、情報交換するのが荘内病院内で月に1度、開催される「ほっと広場」です。病院の専門スタッフによる20分程度のミニ講話に耳を傾け、質問タイムで参加者が悩みを打ち明け、アドバイスを受けることができます。5、6人単位のグループに分かれる茶話会では、お菓子とコーヒーなどをお供に悩みを話し合います。家族と患者同士のふれあい、安らぎの場にもなり、「聞きたかったことが聞けた」「自分の胸の内を話せた」という声が多数、寄せられています。
(「敬天愛人」 2010年2月号より)