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2024年(令和6年) 1月9日(火)付紙面より

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考 ゴジラに本多監督の信念を見た

 正月、やっと映画「ゴジラ―1・0」(マイナスワン)を見た。今年は1954年11月の第1作公開から70年。シリーズ30作目。一時期 、多彩な怪獣を登場させて娯楽色を濃くしたが、最新作は「反戦反核」という、第1作の「原点」に戻ったとの印象が濃い。

 映画は太平洋戦争末期、南の島にあった守備隊航空基地に、島民が「呉爾羅(ごじら)」と呼ぶ伝説の怪獣が現れる。その時のゴジラは、米国版映画で登場した、恐竜・ティラノサウルスを連想させる姿と似ている。戦争が終わった後、水爆の放射線を浴びて進化したゴジラは、より凶暴な“本来の姿”になって東京に現れた。



 初期作は、深海で太古からの眠りに就いていたゴジラが、水爆実験で安住の地を追われ、東京で大暴れする。「(ゴジラは)人の身勝手な行為は許されない」ことを諭しに来たことを描いている。

 第1作で、大暴れしたゴジラが静かに海に戻っていくラストシーンがある。この時、「人間が悪い事をする限り、ゴジラは必ず帰って来る。ゴジラは1匹ではない」と、志村喬演じる古生物学者・山根恭平が語る。最新作のラストシーンで、撃退されたゴジラが海底に沈んでいく。しかし沈みながらゴジラの体が再生していくような場面が、一瞬描かれている。山根博士の「ゴジラは1匹ではない」との警告を、ラストシーンに込めたのではないか。



 第1作を作った鶴岡市朝日地域出身の本多猪四郎監督は、著書『「ゴジラ」とわが映画人生』で次のように述べている。「水爆みたいなものを考えた人間が、いい気になって自分たちの勝手をやっていたら、自分たちの力で自分たちが滅びる。科学というものは必要だが、使うことは相当慎重でなければ、人間を危険にさらすだけ」と。

 本多監督は戦地から引き揚げる際広島を通った。原爆投下の惨状が脳裏から離れず、さらに日本のマグロ漁船が水爆実験で被ばくしたことで「反戦と反核」の訴えを第1作に込めた。初期作品は手作り模型による「特殊撮影技術」を駆使したのに比べ、VFX(現実では見られない画面効果技術)を用いた新作の映像の描写力と迫力は、音響効果と併せて圧倒される。

 前作「シン・ゴジラ」は、政府官邸と全ての省庁挙げて情報戦の様相だったが、新作では、政府は介在しない。敗戦で日本に強力な武力はなく、旧海軍の民間人有志らが立ち向かう。

 「未来に生きるため」ゴジラに挑む中で、「人間の絆」と「信頼」を作品は描いた。ゴジラ―1・0でも根底を貫くのは本多監督が望んだ「平和」への希求。娯楽映画だが、重いメッセージが込められている。

論説委員 粕谷 昭二



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