2019年(令和1年) 9月17日(火)付紙面より
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三川町横山の曹洞宗の寺院「青陽院」(鈴木孝純住職)で13日までの2日間、東北芸術工科大による同院にある木造の十六羅漢像の初調査が行われた。江戸末期に北前船の交易などで財を成した松前藩(北海道)の清水平三郎が寄進したものと伝えられており、清水らが関わった鶴岡市下川の善寳寺の木造の五百羅漢像と作風が似ているため、同じ京都の仏師による造像とみられ、関連性が注目されている。
青陽院の十六羅漢像は、嘉永7(1854)年に同院の31世に当たる住職が就任した際に行われた「結制」という行事に合わせ、海上安全などを願い清水が寄進したと伝わり、境内にある十六羅漢堂に収められている。
一方、善寳寺の五百羅漢像は、清水と松前藩の豪商2人の計3人が発願、寄進者として名を連ね、善寳寺には3人の、青陽院には清水の裃(かみしも)姿のそれぞれの座像がある。
善寳寺の五百羅漢像修復プロジェクトに携わる芸工大文化財保存修復研究センターが昨年、青陽院に顔の形や姿が似た羅漢像があることを知り、同院に調査を申し出ていた。今回の調査には同センターの笹岡直美准教授と文化財保存修復学科の学生、大学院生の計10人が訪れ、十六羅漢堂にある仏像一体ずつの大きさや形状、墨書など外観を調べ、正面、両側面、背面の写真撮影を行った。
笹岡准教授によると、台座や後背を含む仏像の総高は、善寳寺の五百羅漢像の80センチ程度に対し青陽院の十六羅漢像は88センチほど少し大きく、仏像の表情や衣などの作風はほぼ同じ。制作者について、善寳寺の羅漢像はこれまでの同センターの調査で、京都の仏師・畑治郎右衛門と判明しており、青陽院の羅漢像も畑をはじめとする京都の仏師集団によるものとみられる。
善寳寺の五百羅漢堂は国登録有形文化財に指定され、今年5月には鶴岡市が追加認定された日本遺産「北前船・船主集落」の構成資産の一つとなった。青陽院の鈴木住職は「庄内には多くの曹洞宗の寺院があるが、なぜ善寳寺と同じ寄進者、制作者による十六羅漢像がわが寺にあるのか、解明を要する事柄は多い」と話す。
笹岡准教授は「青陽院の羅漢像は保存状態も良く、善寳寺五百羅漢像修復プロジェクトを進める上で参考になる。県内の寺院と松前藩や京都の仏師・畑氏との関係など、今後の研究で明らかになることもあるのではないか」と話した。
2019年(令和1年) 9月17日(火)付紙面より
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酒田市の酒田港古湊埠頭(ふとう)に16日、同港としては最大規模の外国クルーズ船「MSCスプレンディダ」(パナマ船籍、13万7938総トン、通常乗客定員3274人)が初寄港し、同市の市街地は国内外の大勢の乗客でにぎわった。
同船は、MSCクルーズ(本社・スイス)のカジュアルクラスのクルーズ船で、全長333メートル、幅38メートル、高さは20階建てビル相当の67メートル。乗組員1370人を含む最大乗員は4644人。酒田港に寄港した外国クルーズ船としては、コスタ・ネオロマンチカ、ダイヤモンド・プリンセスに続き、3隻目。回数としては2017年が1回、18年が3回、今年はダイヤモンド・プリンセス3回(4、6、8月)に続き4回目。今月14日から21日まで7泊8日の日程で横浜を起点に金沢、韓国・釜山、鹿児島などを巡るコースで、酒田は最初の寄港地となった。
県インバウンド・国際交流推進課によると、乗客は約3400人でほぼ満席。うち約3割に相当する約900人が欧米豪を中心とする外国人。これまで埠頭発のタクシー不足が課題となっていたが、今回は通常の営業区域を緩和し、鶴岡市や庄内町のタクシー業者にも乗り入れてもらった。また、市が埠頭―中町間でシャトルバス12台のほか、中町から山居倉庫、土門拳記念館など4コースを巡るループバンを運行し、乗客の回遊を支援した。
中町二丁目の中町モールは午前9時ごろから、大勢の乗客が訪れ、居合抜きや甲冑着付け、高校生ボランティアによる手拭い作りの各体験、地酒の試飲などを楽しんだ。
この日は月曜日だが、敬老の日で休日。通常は金融機関が埠頭に設ける両替所を設けることができず、中町では「両替えはどこでできるか」とスタッフに尋ねる外国人が少なからずいた。酒田市の関係者によると、そうした乗客には、市が酒田光陵高やプレステージ・インターナショナルと連携して取り組んだキャッシュレス決済(周辺で使えるチケット発行)や、「クレジットカードのキャッシングならコンビニで可能」との案内で対応した。