2019年(令和1年) 9月18日(水)付紙面より
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南米アマゾンの生物・民族資料約2万点を収集し世界的にも高い評価を受けている鶴岡市陽光町在住の文化人類学者、山口吉彦さん(77)の民族資料コレクション展とトークショーがこのほど、東京都江東区新木場の複合施設「CASICA」で行われた。展示には4日間で延べ3500人を超す人が訪れるなど大きな反響があり、関係者は「資料は人類の遺産だということを再確認できた」と手応えを感じている。
首都圏の女性たちが既存の価値観にとらわれず教育・文化の推進事業などを手掛けているベンチャー企業「mother dictionary」が、「旅と手しごと」をテーマに対話・展示などを行うプロジェクト「TRACING THE ROOTS」の一環で開催。今月5―8日の4日間、インディオの羽根飾りや生活用具など山口コレクションの民族資料約150点を展示した。
関係者によると、4日間の来場者は延べ3555人。事前に首都圏のシティーガイド「タイムアウト東京」やFMラジオ局「j―wave」のホームページなどで取り上げられたこともあり、主催者の予想を大きく上回る来場者数となった。
会場では、山口コレクションをかつて展示していたアマゾン自然館とアマゾン民族館(ともに鶴岡市)が2014年までに閉館し、資料は現在、同民族館の収蔵庫に暫定的に保管されているが、市の方針で来年3月末までには全てを運び出すことが求められ、保存・継承が危ぶまれている現状も紹介。来場者からは「これだけの資料は売らずに保存して」「鶴岡市で保存できないなら、山形県で何とかならないか」「自分の住む町に誘致したい」「海外の美術館に話しては」などの声が寄せられた。
6日に行われたトークショーには約80人が参加。山口さんと、庄内の伝統を生かした新たな手工芸品開発などを手掛けている「日知舎(ひじりしゃ)」代表で、東北公益文科大で文化人類学を講義している成瀬正憲さん(39)=鶴岡市三瀬=との対話を聞いた。
対話で山口さんは、インディオたちと生活を共にし少しずつ信頼関係を築きながら物々交換で資料を集めた経緯を紹介。「彼らは自然を神とあがめ、生態系のバランスを崩さないように生きるすべを知っている。この地球は薄いガラスのように危ういもので、破らないように後世に伝えないといけない。自然は、今の自分たちだけに与えられたものでなく、孫子の代まで残すように生活しないといけない」とインディオから学んだ知恵を熱く訴えた。
成瀬さんは本紙の取材に対し、「予想を大きく上回る来場者があり、反響の大きさに驚いた。山口コレクションは人類の遺産だということを再確認できた。まずは地元で保存・活用する道をあらためて探りたい。そうすることへの大きな自信を与えられた」と話した。
2019年(令和1年) 9月18日(水)付紙面より
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浪曲師・玉川太福(だいふく)さん(40)が16日、酒田市の「料亭治郎兵衛」で一席うなった。同市台町かいわいで行われた「夜の文化祭」の一環で招かれ、来酒したもの。太福の師匠・玉川福太郎さんが平田地域の出身。師匠が12年前、亡くなった後も、地元との交流が続いている。
この日はまず浪曲入門編として「清水次郎長伝・森の石松道中」のくだりなどを名調子で紹介。「江戸っ子だってねえ、すし食いねえ」のおなじみのせりふで客席を沸かせ、さらに観客が引き込まれる様子を見計らって「ちょうど時間となりました」とじらして笑わせた。
新潟市出身で千葉大卒業後、コント作家から27歳で浪曲師に転身し、笑いにあふれた新作浪曲が好評。平均年齢が高い業界内で「浪曲界のワンダーボーイ」の異名がある人気者だ。「師匠が亡くなった後も、平田の方々にかわいがってもらって。感謝しています」と語り、一服置いて、40分間の浪曲版「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」で拍手喝采を浴びた。師匠の妻、玉川みね子さんが三味線の伴奏(曲師)を行ったが、福太郎さんと同じ平田出身。一門は毎年11月3日、ひらたタウンセンター・シアターOZで演芸会を行っている。今年は太福の姉弟子・玉川こう福をはじめ、講談の宝井琴柳らが訪れる予定。