2019年(令和1年) 10月5日(土)付紙面より
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和泉流野村万蔵家一門の「萬(よろず)狂言」による「狂言体験ワークショップ」が2日、酒田市の希望ホールで開かれ、市内17小学校の5年生650人余が、舞台での基本動作体験や代表的演目の鑑賞などで伝統芸能に親しんだ。
市教育委員会が2015年、「松山能」(県指定無形民俗文化財)が伝わる松山地域の小学校を対象に始め、一昨年からは「『文化都市酒田』発信事業実行委員会」(委員長・丸山至市長)と共催し、対象を市内全小学校の5年生に拡大して継続している。
この日は午前・午後の2回実施。このうち午前の部では狂言師・河野佑紀さんが「狂言はぼけと突っ込みがはっきりしている、650年前の『お笑い』」「狂言の誕生は室町時代。当時の人たちの息遣いを感じてほしい」などと解説した後、代表的演目の一つ「盆山(ぼんさん)」を披露した。
ワークショップでは、代表の20人が能舞台に上がってすり足、笑い、のこぎりで枝を切り落とすしぐさ、しゃがんだ状態で前進するキノコの霊の歩き方などを体験、会場は笑いに包まれた。その後、一門は狂言「附子(ぶす)」を披露、太郎冠者、次郎冠者と主人の楽しいやりとりに児童たちは笑いながら見入っていた。
2019年(令和1年) 10月5日(土)付紙面より
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酒田港へのクルーズ船寄港をテーマにした「クルーズセミナーin酒田」が3日、酒田市のガーデンパレスみずほで開かれた。英国船籍の大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(乗客定員約2700人)の寄港決定権を持つカーニバル・オーストラリア社のマイケル・ミハイロフ取締役らが講演で、酒田港と周辺について「加茂水族館は世界基準で、ここだけでも訪問する価値がある」など観光資源を高く評価するとともに、「観光施設のキャパシティー(収容人数)が大きいところが少ない」など課題を指摘した。
酒田港の利用促進を図っている官民連携組織“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会(会長・吉村美栄子知事)が主催した。2016年4月に外航クルーズ船誘致部会を設け、誘致や受け入れ環境の整備に取り組んでいる一環。行政や観光関係者ら約100人が参加した。
第1部では、JTBグローバルマーケティング&トラベル社の藤田宗則クルーズ課長が「寄港地観光ツアーの現状と課題」と題して講演。ダイヤモンド・プリンセスの寄港地観光ツアー造成に関わった経験を踏まえ、酒田港の魅力については▽アクセスが良い(クルーズ視点だと、横浜から1日など近い)▽隠れた本物の宝庫(まだ世界に知られていない優れた観光地が近距離にある)▽地域の力(広域連携や地域を挙げた歓迎が充実)―などを挙げた。
一方、課題としては▽隠れ過ぎており、もっとアピールが必要▽各観光施設のキャパシティー(大人数で行けるところが少ない)▽地域の通訳案内士(ローカルガイドが少ない)▽椅子やテーブルで対応できないレストランがある―などを指摘。さらに魅力的にするため、地域の料理人や職人らと直接交流して現地の文化を知る「ローカル・コネクション」に力を入れ始めたことを紹介し、「少しのアイデアで満足度が飛躍的に高まる。一緒にアイデアを考えて」と呼び掛けた。
第2部ではミハイロフさんが「プリンセス・クルーズから見た酒田港」と題して講演。日本については「ミステリーがたくさん残っており、魅力的。文化や歴史、自然が豊かで、クルーズで使える港が50港と多い。たくさんのミステリーを船でつなげ、発見していく楽しみがある」とした。
ローカル・コネクションについては「『人』がキーワード」として、乗客が日本各地の料理人や杜氏(とうじ)、ガラス職人などと触れ合った事例を紹介。「普通のツアーでは行けないようなところに行き、人と触れ合う感動は大きい。直接的な経済効果はあまりなくても、口コミで良さが広まる波及効果は大きい」とした。
寄港地・酒田については「加茂水族館は世界基準で、ここだけでも訪問する価値がある。本間美術館の庭園も素晴らしい。羽黒山は世界遺産レベルで、斎館の精進料理は宝物と感じた。そういう本物、特別感があるものを組み合わせ、新しいものをつくっていきたい」とした。また、来年のダイヤモンド・プリンセスの寄港予定4回のうち、初回(4月18日)にはオーストラリアとニュージーランドのマスメディア関係者も来ることに触れ、「酒田にとって良いアピール機会になる」とした。