2022年(令和4年) 10月10日(月)付紙面より
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旧庄内藩主酒井家の庄内入部400年を記念した式典が8日、鶴岡市の荘銀タクト鶴岡で開かれた。歴史学者の本郷和人・東京大史料編纂(へんさん)所教授の記念講演、徳川宗家と酒井家をはじめとする「徳川四天王」の現当主そろい踏みによる記念座談会などがあった。9日は鶴ケ岡城址の鶴岡公園を中心に、大名行列や祝賀行列の「荘内大祭」、食のイベントやステージ発表の「荘内400年にぎわい市」が繰り広げられ、入部400年の祝賀ムードを盛り上げた。
未来に歴史と文化つなぐ
本郷さん講演酒井忠次公は「文の出来る武」の家臣
酒井家は、徳川家康を支えた家臣団の「徳川四天王」の筆頭・酒井忠次(ただつぐ)公を祖とし、1622(元和8)年10月に3代・忠勝(ただかつ)公が庄内に入部して、400年の節目を迎えた。
記念事業のメインとなる式典には、鶴岡市と友好関係にある鹿児島県の鹿児島市と曽於市、東京都の江戸川区、墨田区、新島村、北海道木古内町の首長らが招かれ、会場は市民ら約1000人で満席となった。
本郷さんは「酒井家・庄内の位置付け」と題して記念講演。家康の家臣に対する評価について、「文(政治)よりも武(軍事)を重視し、戦で着実に成果を上げた人を引き上げた。酒井忠次を筆頭とする四天王のように『文の出来る武』の家臣は特に重く見た。さらに四天王家は徳川家にとって最も特別な存在であり、庄内藩酒井家は会津藩とともに連携して東北の伊達、佐竹、上杉の外様大名を抑える役割を担った」と解説した。
「未来に歴史と文化をつなぐために」をテーマにした記念座談会では、徳川記念財団理事長の徳川家広さん、四天王の酒井忠次家の18代当主酒井忠久さん、本多忠勝家22代当主の本多大将(ひろゆき)さん、榊原康政家17代当主の榊原政信さん、井伊直政家18代当主の井伊直岳さんが、それぞれの家に伝わることなどを披露。徳川さんは家を継ぐ苦労を「引き継いだ物が多く、保管するために収蔵庫を借りている」と説明し、各家でも貴重な歴史資料を次代につなぐために管理に苦心していることを紹介。「目立ったことはせず慎むように」(本多さん)、「家を継承していくために質素で」(榊原さん)と先代らから教えられてきたといった披歴もあり、家を絶やさずに守り伝えることの苦労も語られた。
酒井さんは「庄内入部以来どこにも移ることなく400年を迎えた。先人たちに感謝したい」と庄内への愛着と感謝を語り、「次の時代にも歴史と文化を引き継ぎ、夢のある庄内へと発展していくことを祈念している」と述べた。
講演と座談会に先立ち、国指定重要無形民俗文化財・黒川能の祝賀能「高砂」の上演、皆川治鶴岡市長、酒井さんのあいさつ、徳川さんらの祝辞、小中学生歴史文化研究コンクールの表彰が行われた。式典後は、同市の東京第一ホテル鶴岡で記念レセプションが開かれた。
2022年(令和4年) 10月10日(月)付紙面より
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酒井家庄内入部400年の節目を祝う「荘内大祭」が9日、鶴岡公園を中心に中心市街地を練り歩き、「荘内藩伝承大名行列」や庄内各地の祭り・伝統芸能の祝賀行列が盛大に繰り広げられた。
「荘内大祭」は、鶴岡公園北広場で行列安全祈願の「御旅所祭」で開幕。神事や行列参加隊による演舞が披露され、公募で選ばれた埼玉県和光市の会社員、山本舜介さん(28)が、400年前の10月に庄内に入部した初代藩主の酒井家3代・忠勝公役を務め、「出羽の国庄内に入部して以来400年の大きな節目を迎えた。この間、皆がさまざまな困難を乗り越え、今もなおその歴史が続く。庄内の大いなる発展と、すべての人々が幸せに暮らしていくより良い地域になることを祈念する」と藩主口上を述べた。
甲冑(かっちゅう)隊、三役奴(やっこ)振り、砲術隊、女人列、少年隊士など約400人の「荘内藩伝承大名行列」と、鶴岡市の天神祭大絵馬、あつみ温泉の御湯輿(おゆこし)、大山犬祭りのミニ奴振り、酒田市の酒田まつり大獅子、一条八幡神社奴振り、庄内町の氣龍祭姫龍が参加する祝賀行列がスタート。北広場から致道博物館、鶴岡市役所、鶴園橋、川端通り、三雪橋を経て鶴岡公園までの約2キロを総勢約600人で練り歩いた。
鶴岡公園疎林広場では、「荘内400年にぎわい市」が開かれ、鶴岡青年会議所による食のイベント、子どもたちのダンスや荘内藩甲冑武者隊の演武などステージ発表が繰り広げられた。「美夢(うめ)!ごっつぉ合戦」と銘打った食のイベントでは、徳川家と徳川四天王の逸話を基にした限定のコラボメニュー、地元の食材を使った料理、和スイーツ、地酒の特別限定カクテルなどが提供され、子ども向けの縁日も開催。午前中は好天に恵まれ、大勢の市民が訪れ、庄内の歴史と伝統をアピールした入部400年祝賀の一大イベントを楽しんでいた。
2022年(令和4年) 10月10日(月)付紙面より
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観音様の御歳夜「だるま市」で知られる鶴岡市本町二丁目の七日町観音堂で8日、白だるま合格祈願祭が行われた。縁起物の「合格しろ(白)!」の言霊を借りる意味合いの白いだるまが奉納され、高校や大学受験、就職などの合格を願う人たちがお堂に足を運んだ。
この日、観音堂礼拝堂には祈願者や家族、地元住民など約30人が集まり、「大学合格」や「保育士試験合格」「四肢健康」などと書かれた40体余りの白だるまが奉納された。中には内陸や県外の祈願者の名前もあった。
祈願祭は午後6時に始まり、南岳寺(鶴岡市)の榎本雅彦住職と海向寺(酒田市)の伊藤隆文住職が護摩祈祷に臨んだ。太鼓や鐘の音と共に読経の声が響く中、護摩壇の火に白だるまをかざして魂を入れる「精入れ」が行われた。その後、祈願者の名前が読み上げられ、参列者は自分の順番が来ると目を閉じて合掌し静かに祈っていた。
家族で訪れた鶴岡北高3年の若生心愛さん(18)は「高校受験の時も祈願祭に来て無事に合格できた。今回は大学入試合格を願った。今の入試は知識だけでなく自分を表現することが必要。しっかり準備したい」と話していた。
祈願祭は七日町町内会(吉川義雄会長)主催。「だるまの町の七日町」をPRしようと、2013年ごろから徐々に規模を拡大し実施している。17年から「目標達成」の効力があるとされる白だるまを行事に取り込んでいる。