2024年(令和6年) 11月22日(金)付紙面より
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2026年4月の公立化に向けて新たなスタートを切った酒田市の東北公益文科大学(神田直弥学長)は、機能強化策について検討を進める上で、これまでの取り組み・成果を改めて確認しようと、全4回にわたる連続シンポジウム「公益大があるということ これまで~これから」を企画。初回が20日、同市公益研修センターで開かれ、講演とパネル討議を通して「成長の軌跡」について考察した。
公益大の公立化・機能強化に関して今年8月、県と庄内2市3町、公益大を運営する学校法人の7者が基本合意書を締結した。先月21日には合意書に基づく準備組織「公立大学法人設立準備委員会」の初会合を開催、26年4月の公立化を目指して来年9月上旬にも総務省と文部科学省に公立大学法人の設立認可を申請し、同12月ごろの認可を見込むといったスケジュールを確認した。
連続シンポは、県「東北公益文科大学機能強化事業費補助金対象事業」として、今回を含め本年度内に計4回開催する予定。初回は行政や経済、教育の関係者計約100人が聴講した。
この日は最初、高等教育に造詣が深い田中義郎桜美林大学特命副学長が「行動する公益学とMVP」のテーマで講演。「公益学は行動哲学」と前置きし、「大学選択は『学習の質』の選択。優れた『学習の質』は未来を魅了する」と述べた上で、世界中の若者や専門職が学びを継続的に深めるために集い、協働して世界の課題解決を模索する「交差点」として大学が機能する「University at the World Crossroads=UWC構想」について説明した。
引き続き田中特命副学長の進行で、神田学長、いずれも卒業生の後藤智幸さん(2期生、イタガキ)、菅原梨帆さん(15期生、東京海上日動火災保険)、須藤瞳さん(19期生、山形銀行)の4人がパネル討議。入学動機、学生時代に学んだこと、その学びを社会人としてどう生かしているかなど意見を交わした。
次回シンポは「これからの社会と起業マインド」をテーマに来年1月に開催する予定。
2024年(令和6年) 11月22日(金)付紙面より
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地方の文化向上に尽くした人に贈る鶴岡市教育委員会が主催する「第67回高山樗牛賞」の授賞式が20日、鶴岡市のグランドエル・サンで行われた。本年度受賞者で演劇脚本を通して地域ゆかりの人物を顕彰し地方文化の啓発向上に貢献している池田肇さん(64)=鶴岡市日出一丁目=と児童生徒対象の高山樗牛奨励賞を受賞した佐々木みらいさん(18)=酒田東高3年=に賞状と記念品が授与された。
樗牛賞の池田さんは遊佐町生まれ。日本劇作家協会会員。櫛引地域生涯学習振興会の事務局長を務める傍ら劇作家、演出家として創作活動を続けている。近年は言語学者の齋藤秀一(ひでかつ)、横綱柏戸など庄内地域ゆかりの人物を題材に脚本を執筆、上演している。
奨励賞の佐々木さんは酒田東高の文芸部副部長。小説「幸せそうなあなた」は、自身の入院体験をもとにしたもので、何気ない会話を通した巧みな人物描写や表現力などが評価された。
式典後の受賞者講話で池田さんは「これまで40本ほどの演劇脚本を書いてきたが、賞とは無縁だった。櫛引で地元の歴史を再発見できないかと活動を始め、やっと形になってきた。演劇はホン(台本)が悪くても役者が良ければ何とかなるもの。役者やスタッフ、演奏家に恵まれているので、受賞できたと思っている」と応援に駆け付けた仲間への感謝を述べながら、「次は遠藤虚籟(きょらい)に取り組んでいる。来月には『柏戸少年紀』の朗読劇も行うので、ぜひ鑑賞を」と呼び掛けていた。
佐々木さんは「検査入院した時に、これまで知らなかった病院生活に触れ、楽しく過ごせたことが創作につながった。作品には両親も登場するが、部誌にはペンネームで書いたので、家族にも教えていなかったがみんな喜んでくれた」と話した。
2024年(令和6年) 11月22日(金)付紙面より
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循環型農村経済圏(庄内スマート・テロワール構想)の構築を目指すシンポジウムが18日、鶴岡市東原町のグランドエル・サンで開かれた。三重大学副学長で大学院地域イノベーション学研究科教授の松田裕子さんが「サステナブルな食と農の未来へ」と題して講演した。
気候変動で農作物が被害を受けたり穀物や肥料、農業資材の高騰が続く中、地域資源を活用した持続性のある循環型農村社会が注目されている。今回のシンポジウムは山形大学農学部が中心となって取り組む「庄内スマート・テロワールプロジェクト」で開発した加工食品の試食会や有識者の講演を通して「農業の未来」を考えようと山形大学アグリフードシステム先端研究センターと庄内スマート・テロワール構築協議会が企画した。
講演で松田さんはドイツの先進例を挙げながら循環型農村経済圏の重要性について説明した。その中で松田さんは「開発する商品はただ単においしさを追求するだけでなく、農家を守ることと環境を保全すること、そして地域貢献の大切さというものが消費者に伝わるものでなければならない。消費者にとっても地元産品を優先し生産者との関係を深めることが大事」と語った。この後、環境省・地域循環共生圏推進室室長の石川拓哉さんが循環型共生圏に取り組む全国の例を紹介した。
庄内スマート・テロワールプロジェクトで生まれた食材の試食会では「スマテロ納豆汁」「スマテロベーコンとキノコのクリームソース」「スマテロ豚の餃子」など10品が用意され、シンポジウムに参加した生産農家や飲食店の店主、各企業の代表者、山大農学部の学生らが試食を楽しんだ。参加者は「どの料理も食材の特徴を生かし、おいしく仕上げている」「地域で作ったものを地域で消費し循環させる大切さを改めて感じた」と感想を話した。
2024年(令和6年) 11月22日(金)付紙面より
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鶴岡市の櫛引地域の3小学校で18、19の両日、認知症サポーター養成講座が行われ、子どもたちが認知症の当事者やその家族の応援者であることを学んだ。
櫛引地域の小学校では、福祉学習の一環として、認知症について正しく理解する学習を行っている。同市社会福祉協議会「地域包括支援センターくしびき」の協力で、18日は西小、19日は南小と東小で講座が行われた。
このうち櫛引東小(芳賀恵美校長、児童69人)では4年生8人が受講。初めに日本は超高齢化社会と言われ、3―4人に1人が65歳以上の高齢者で、そのうち5人に1人が認知症であることや、脳の中の“記憶の壺”が壊れることで新しいことを覚えられなかったり、物忘れすることなどをスライドで学習。その後、センター担当者が認知症のお年寄り役、教頭と担任が小学生役になり寸劇を披露。道に迷ったお年寄りへの声掛けや家族の対応などを分かりやすく紹介した。
担当者の「認知症になった人が失敗をとがめられたりするとますます元気がなくなり、症状も悪化する。大丈夫だよと分かってあげることで、改善したり症状の悪化が緩やかになる」という説明に、子どもたちも「優しく声を掛けてあげたい」「認知症について知ることができて良かった」などと話していた。
櫛引東小では4年生の総合学習のテーマが「福祉」で、高齢者理解や認知症サポーター講習、「桃寿荘」訪問などを行っている。
2024年(令和6年) 11月22日(金)付紙面より
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「鶴岡の名工」としてたたえる、本年度の鶴岡市卓越技能者表彰式が19日、同市の新茶屋で行われ、受賞者2人に皆川治市長から賞状が贈られた。
市卓越技能者表彰制度は旧鶴岡市が1985(昭和60)年、城下町・鶴岡に伝わる伝統的な技能などを尊重し、技能者の地位向上や技能水準を高めることを目的に創設。昨年度までに計146人の「鶴岡の名工」が受賞している。
40回の節目となる本年度は、野菜漬物工で本長に勤務する大瀧久美子さん(60)=水沢=と、日本料理調理人で「鶴岡料理すず音」などを経営する丸山環さん(59)=錦町=の2人が選ばれた。表彰式には受賞者と来賓、選考委員が出席。受賞者に賞状、大瀧さんの夫、丸山さんの会社の統括女将(おかみ)に記念のメノウ製盾(同市の城戸メノウ製作所作製)がそれぞれ手渡された。
皆川市長は「これまで磨いた技を後進に伝え、技能を通じて市の産業のさらなる発展に尽力いただきたい」とあいさつ。表彰を受け大瀧さんは「チーム本長の代表として表彰を受けたのだと思う。これからも会社、漬物業界、鶴岡の発展に貢献したい」、丸山さんは「今後とも庄内の食材を使った料理で、食文化の発展に尽くしたい」と述べた。表彰式後は出席者による記念撮影と祝賀会が行われた。