2024年(令和6年) 11月23日(土)付紙面より
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遊佐町沖、酒田市沖で進む洋上風力発電の事業化に関して県は21日、調査から建設、保守管理、撤去まで約30年間の事業ライフサイクルなどで生じる県内経済への波及効果が最大で1779億円に上るとの試算を発表した。間接的な雇用を含めた就業者数は最大で約1万2500人が見込まれるという。
再エネ海域利用法に基づく「促進区域」の指定を受ける遊佐町沖の想定海域は、鳥海国定公園区域を除いた上で沿岸漁業に配慮し海岸線から1カイリ(約1・8キロ)離れ、南北約8・3キロ、沖合約5キロに広がる。発電事業者選定作業が現在行われており、年内にも決定する。酒田市沖は、促進区域の前段階に当たる「有望な区域」の指定を受けており今後、国や県、市、漁業関係者らによる法定協議会が設置される。
一方、国土交通省は今年4月、港湾法に基づく「海洋再生可能エネルギー発電等拠点港湾(基地港湾)」として同市の酒田港を指定。2027年度中の竣工(しゅんこう)を目指し今夏に着工した。
県エネルギー政策推進課によると、洋上風力発電導入に向けた議論を進めるにあたり、地域住民や経済界の理解促進、合意形成に向けた基礎的資料にするとともに、県内のさまざまな分野に波及する可能性を広く周知するため、遊佐町沖は風車30基計450メガワット、酒田市沖は風車28基計504メガワットの総出力、運転期間20年と設定し、県内経済への波及効果を試算したという。
同課が示した資料によると、地元企業による受注拡大を見込んで県内調達率を現状の10%から18%に引き上げた場合、波及効果は1779億円に上り、内訳は遊佐町沖が745億円、酒田市沖が832億円、基地港湾整備が202億円。就業者数は1万2474人を見込む。現状の場合、波及効果は1054億円で就業見込み者数は7383人。
稼働後の県と両市町の税収は、地方交付税の減収分を差し引いても法人税と固定資産税で179億8000万円(県56億7000万円、酒田65億3000万円、遊佐57億8000万円)の増額が見込まれている。
2024年(令和6年) 11月23日(土)付紙面より
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今年7月に発生した記録的大雨の被災者支援に向けて開催されたイベント「心ひとつ酒田チャリティーコンサートin希望ホール」で、チケット収入や募金などから160万円余の寄付金が集まり、主催した実行委員会が20日、市役所を訪れ、義援金として酒田市に寄付した。
チャリティーコンサートは支援の輪を広げようと、市内で歌謡教室を主宰する佐藤良子さん(61)=同市=を中心に実行委員会を組織し企画。今月10日のコンサート当日は庄内の地域住民はじめ県内外から1000人余の人が来場した。ポップス、演歌、声楽、楽器演奏などの音楽に加え、一輪車演技、黒森歌舞伎、演劇など多くの団体が多彩なパフォーマンスを披露しステージを盛り上げたほか、募金箱を設置したホワイエでは賛同した事業者が集まりマルシェを開催。イベントは大きなにぎわいを見せ、来場者らの募金、チケット売り上げ全額、マルシェ売り上げの一部計161万1777円の寄付金が集まった。
この日の贈呈式には佐藤さんをはじめ実行委員3人がスタッフTシャツを着て出席。佐藤さんはイベントテーマにしていた「心ひとつ」と書かれた封筒を示し「イベントがきっかけで、自分のできることで被災地を応援できたという声を多くいただいた。これから冬時期を迎える被災地に、今一度心を寄せてもらえたら」と、矢口明子酒田市長に寄付金を手渡した。
受け取った矢口市長は「多くの人がそれぞれのできる形で心を寄せてくれたことが何よりありがたい。皆さんの気持ちが詰まっていることを実感している」と謝辞を述べた。贈られた義援金は「令和6年7月山形県酒田市大雨災害義援金」に組み入れ、被災者支援に活用する。
2024年(令和6年) 11月23日(土)付紙面より
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酒田警察署(小川広治署長)管内の中学・高校の美術部員たちが制作した絵画が酒田市のJR酒田駅地下道の壁面を飾り20日夕、開所式が行われた。地下道が明るく華やいだ雰囲気となり、新しくなった絵を眺めながら行き来する歩行者の姿が見られた。
2003年に同地下道で発生した恐喝未遂事件などを契機に、市と同署が翌年から駅周辺の環境浄化などを目的に「地下道アートギャラリー」と称して企画。酒田・遊佐両市町の中学・高校の美術部員たちの協力で、毎年この時期に絵画を更新している。
21回目の今年は地域の魅力をテーマに取り入れて各校が作品を制作。地下通路の中央部左右の壁面にいずれも縦90センチ、横180センチの大きさの絵画計12点(中学8点、高校4点)を飾った。
この日、酒田駅前交流拠点施設ミライニで行われた開所式には、絵画制作に当たった生徒たちをはじめ市、JR酒田駅、酒田地区少年補導員連絡会などから関係者が出席。小川署長が「今の安全な地下道は皆さんの絵をはじめ、地域の皆さんが作り上げた空間。犯罪抑止が広がり、より安心・安全な地域につながることを願う」とあいさつした。
その後、出席者は地下道に移動し、代表生徒9人が地下道前でテープカットし開所を祝った。夕焼けに染まる日本海を見事なグラデーションで表現したもの、丸池様や縄文土器など遊佐町の古代ロマンを描いたものなど、酒田、遊佐の魅力を題材に選んだ作品が並び、地下道に明るい雰囲気を醸し出している。
舞う桜の花びらの中に酒田の夕日や滝を描き、バックに雄大な鳥海山を配した「光輝く希望の酒田へ」を制作した東部中美術部の齋藤結(ゆう)副部長は「絵は美術部員約30人で描いた集大成。大きく飾られているのを見て感慨深く、地域の安心・安全のために使われることがうれしい」と話した。同署によると、来年秋まで飾るという。