2021年(令和3年) 12月15日(水)付紙面より
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鶴岡市の鶴岡まちなかキネマで上映中の映画『梅切らぬバカ』の監督で、酒田市出身の和島香太郎さん(38)を迎えたトークショーが11日、同館で行われた。地元鶴岡をはじめ、酒田市からも高校時代の同級生や知人らが訪れ、話題の作品を観賞した後に、撮影のエピソードなどに耳を傾けた。
和島監督は1983年生まれ。テレビドラマの演出などを手掛け、2012年に短編『小さなユリと/第一章・夕方の三十分』がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭短編部門奨励賞受賞。14年、初監督作『禁忌』が劇場公開されるなど活躍している。『梅切らぬバカ』は加賀まりこさん演じる占い師の母と、塚地武雅さん演じる自閉症を抱える息子が社会の中で生き抜く様を温かく誠実に描いた作品。自身も自閉症の義理の息子を持つ加賀さんが、テレビのトーク番組で映画の素晴らしさを語ったことで話題となり、11月中旬の公開の際は3館のみでの上映だったが、現在は120を超える映画館で上映されている。
トークショーは2回行われ、いずれも80席の客席が埋まって「完“梅”御礼」となった。山形市在住の映画コメンテーター、荒井幸博さんの進行で、製作のいきさつや監督を志したきっかけなどについて語った。
軽度の認知症がある60代男性のドキュメンタリーを撮影していた時、近隣の住民とのトラブルなどがあると「モザイクをかけたり、フレームから押し出していた。双方の思いを描くには劇映画でなければ」と思い、脚本を2019年6月に書き上げた。荒井さんが「加賀さんにお願いするとは勇気あるキャスティングでしたね」と振ると、「辛口の占い師という役柄にぴったりだったので。義理の息子さんが自閉症だということは撮影の1週間ほど前に知り、不思議な縁を感じた」と答えた。また「加賀さんは自閉症の方を育ててきた人への尊敬の念も持っておられる。障がいのある方への社会の目が優しくなってほしいと引き受けてくださった」と話した。
子どもの頃から地元の映画館でハリウッド映画を見て育った和島監督は、中学2年生の時に将来は映像に関わる仕事をしたいと思い始め、高校時代の文化祭で、自分で脚本を書き、クラスメートが出演する映画を製作。作品は不評だったが、みんなに見てもらえることがうれしかったと笑いを交えて語った。
映画の評論にも定評のある荒井さんは「酒田、庄内、山形に風が吹いていると感じる。作品に力がなければ主演女優の宣伝だけでこれほど広まらない。賞レースも楽しみ」と絶賛していた。
和島監督は13日には酒田市役所を表敬訪問。丸山至市長とも懇談した。