2024年(令和6年) 8月18日(日)付紙面より
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鶴岡市温海地域の戸沢地区に伝わる「戸沢花胡蝶歌舞伎」の公演が16日、同地区の戸沢公民館で行われた。戸沢自治会(伊藤彦市会長)が中心となって地域文化を受け継いできたが、近年の高齢化と少子化による後継者不在のため、今回を最後に公演活動は休止する。地元住民や地区出身者などが大勢集まり、最後の舞台を見守った。
戸沢花胡蝶歌舞伎の起源は定かではないが、隣接する山五十川地区で300年ほど前から伝承されている山五十川歌舞伎と同じぐらいの歴史があるとされており、現存する台本には江戸後期の1844(弘化元)年のものも含まれている。素朴な芝居が特徴で、お盆に合わせて例年8月16日に公演を行うことから「供養歌舞伎」とも呼ばれる。
記録に残されているものだけで演目は60超。「太閤記」や「義経千本桜」「源平盛衰記」などのラインアップから、戸沢地区に隠れ住んだ平家の落人供養で演じられたため、「供養歌舞伎」と呼ばれるようになったという説がある。
一方、座長を失い解散した旅の歌舞伎一座の道具が同地区に残され、信心深い住民の間で歌舞伎が行われるようになったという説もある。
こうした歴史を持つ戸沢花胡蝶歌舞伎だが、近年は役者や裏方の高齢化が進んでおり、約30人の一座は40―60代が中心となっている。少子化や人口減少による担い手不足から、メンバー一人一人の負担も増加しているという。
コロナ禍の影響で公演は2019年以降、4年ほど行われておらず「活動休止」の声が上がっていた。しかし、「コロナで活動を中断してそのまま休止するのは、今まで見に来てくれた人たちに申し訳ない」という思いが一致。「公演活動を休止する前に、一つの区切りとして最後の舞台を披露しよう」と今年3月の自治会総会で決定した。
5年ぶりの公演となった今回の演目は「奥州安達ケ原三段目 袖萩祭文(そではぎさいもん)の場」。平安末期、源八幡太郎義家に滅ぼされた安倍一族の再興を図る兄弟の復讐(ふくしゅう)を軸に、兄弟周辺の人々の悲劇が舞台で演じられた。会場には100人余りの観客が足を運んだ。
ステージで役者が床を踏み鳴らす足拍子とともに大きく見えを切ると、観客席から大きな拍手が起こり声援も飛んだ。
戸沢地区出身で現在は鶴岡市の別の地域に住んでいるという70代と80代の女性たちは「小さいころ何回も見た歌舞伎。ここしばらく見に来られなかったが、今回が最後の公演と聞き駆け付けた。地域の伝統文化がなくなるのは本当に残念」と話し、最後の舞台を見守った。
戸沢自治会の伊藤会長は「役者の数だけならもう5、6年と公演を続けることはできるが、裏方が以前に比べて半減している。それぞれの仕事に加え、防災など歌舞伎以外の自治会活動もあり、今後は個人の負担が増え過ぎてしまうことが目に見えている。先人や諸先輩に休演することを心からおわびするとともに、これまで支えてくれた方々へ感謝したい」と述べた。
2024年(令和6年) 8月18日(日)付紙面より
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鶴岡市の市街地を流れる内川で15日夜、お盆行事の灯籠流しが行われ、故人の名前を記した灯籠が川面をゆっくりと下った。
内川の灯籠流しは昭和初期から100年ほどの歴史があるという。現在は川端商店会などで組織する実行委員会が実施している。今年は100件を超える申し込みがあった。鶴園橋のたもとで開かれた供養式で、3つの寺院の住職が「三界萬霊」供養の読経を行い、一人一人の名前を読み上げた後、供養したい人の名前や戒名が書かれた灯籠を参加者とスタッフが次々と川面に流した。
鶴園橋と下流の三雪橋の上や川の両岸には、浴衣を着た家族連れなど大勢の市民が集まり、水面をほのかに照らしながらゆっくりと流れる灯籠の淡い光を見つめていた。2019年に69歳で亡くなった弟の供養で参加した同市大塚町の吉良順子さん(77)は「弟は何をするにも一緒だった。15年ほど前に妹の家族を含めてみんなで黒部ダムに旅行したのが忘れられない思い出です。新盆から毎年、灯籠流しをお願いしてきました。来年の七回忌まで続けます」と静かに話した。
一方、この夜は近くのみゆき通りを会場に「盆踊り」も行われ、多くの市民や帰省客らが夏の夜のお盆行事を楽しんでいた。
2024年(令和6年) 8月18日(日)付紙面より
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首都圏などの小学生と保護者を対象とした体験ツアー「おやこ地方留学」が17日まで6泊7日の日程で、鶴岡市内で行われた。自然に触れながら生産者の話を聞いたり、伝統文化を体験したりして命の大切さを学んだ。
生産者と消費者をつなぐ国内最大級の産直アプリ「ポケットマルシェ」を運営する雨風太陽(岩手県花巻市)が、2022年の夏休みから始めた長期滞在型の親子参加プログラム。今夏は全国12地域で行われ、県内では初開催となった。鶴岡市内の農家がポケットマルシェに加盟しているつながりもあり、同市内でのツアーが企画され、7月下旬からと、8月上旬、同中旬の3回実施された。プログラム内容はすべて同じで、漁業体験やだだちゃ豆収穫体験、カモの食肉処理見学、そば打ち体験などが盛り込まれた。
11―17日の今回のツアーには東京都、神奈川県、千葉県の4家族9人が参加。16日は同市のいでは文化記念館を拠点に山伏修行体験が行われた。同館の学芸員から出羽三山の文化と修験道について学んだ後、入峰式を行い、白い布の宝冠をかぶって山駆け(石段登山)、修行中の食事となる一汁一菜の「壇張り」、座禅の「床固め」を体験。修行の締めくくりに、燃え上がるまきの火を飛び越える生まれ変わりの行の「火渡り」に臨んだ。子どもたちは「やー」と元気に声を上げながら次々と炎の上を飛んでいた。
東京都から参加した小学4年の伊藤幹(かん)君(9)は「海の体験ができるので参加した。シーカヤックに乗ったり、サザエを拾ったりして1週間とても楽しかった。山伏修行の壇張りは一汁一菜で少なくておなかがすいちゃった」と話していた。