2024年(令和6年) 8月25日(日)付紙面より
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停滞した前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んで庄内・最上地域に甚大な被害をもたらした先月の記録的大雨は、25日で発生から1カ月となった。先月25日午後から翌26日未明にかけ、異例ともいえる2度にわたっての大雨特別警報が出された酒田市のうち、荒瀬川が決壊・氾濫した影響で家屋に大量の土砂が流れ込み、避難中だった女性=当時(86)=が亡くなるなど被害が大きかった大沢地区の一部では依然、断水が続き住民は避難生活を余儀なくされている。土砂の撤去作業こそ始まったものの、その全体量は把握できておらず、生活再建への道のりは険しい。
泥、災害ごみ片付けめど立たず 「生まれ育った土地どうなるか」
今回の大雨では、短時間に大雨を降らせる「線状降水帯」の発生で雨量が増え、大雨特別警報が酒田市に2回(先月25日午後0時55分、同11時40分)、遊佐・庄内両町に各1回出された。山形地方気象台によると、先月24日から同27日までの総降雨量は酒田市大沢で407・5ミリ、酒田で305・0ミリと平年の7月1カ月分の雨量を超えた。県による23日までのまとめによると、住宅への被害は酒田市739戸、遊佐町312戸、鶴岡市110戸、庄内町60戸、三川町16戸と庄内全域に及ぶ。酒田、遊佐両市町では依然、計70人余が避難所での生活を余儀なくされている。
23日午後、被害が大きかった酒田市大沢地区のうち、北青沢の小屋渕集落を歩いてみた。15日に始まった重機による道路上の土砂撤去作業はかなりのハイペースで進む。同日以降、自宅敷地を埋めつくした土砂のかき出し作業に追われる相蘇賢一郎さん(63)は「泥や土砂が家の中まで入り込み、床上90センチまで浸水した。迂回(うかい)路が完成した先月27日、家を見に来た時は開いた口がふさがらなかった」と。現在は市街地の市営アパートから通いながらの作業で「時間が経っただけに泥の臭いがひどい。災害ごみ搬出を含め片付けのめどが全然立たない」と続ける。
兼業農家の相蘇さん。家屋だけでなくほ場も土砂崩れや倒木被害に遭い、農機具も全て壊れてしまったという。「もう10年、15年若ければ頑張れたかもしれないが、離農も視野に入れている。生まれ育ったこの土地がどうなるのか、寂しさがある。家を直して住み続けるか、引っ越すかはまだ決めていない。家族でよく話し合って決めたい」と話した。