2005年(平成17年) 12月31日(土)付紙面より
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鶴岡市の元中学教師・板垣昭一さん(75)が、北海道開拓の基礎を築いた同市出身の北海道開拓使・松本十郎(1839―1916年)を主人公にした歴史小説「北辰軸(ほくしんじく)」を書き上げた。十郎の根室時代にスポットを当て、実直で正義感あふれる「アツシ判官(はんがん)」の生きざまが描かれている。
板垣さんは、1990年に余目中を最後に退職。
教職を退いた後は、国語教室を開講し、中学生に国語を教える一方、執筆活動にも取り組み、7冊の教育書を書き上げた。小説は「モミの木の仲間たち」「町内会長物語」に次いで3冊になる。
板垣さんは、15年ほど前に友人に十郎について書くよう勧められた。それまで松本十郎を知らなかったが、史料を集めるうちにその人物像にひかれ、生涯を小説にまとめることを思い立った。
地元だけでなく北海道からも数多くの史料を取り寄せ、下調べをしているうちに、判官として3年余りを過ごした根室時代だけで小説になると判断。根室にも足を運び、ゆかりの地を見て回り、構想から15年、執筆を開始してから3年で物語が完成した。
松本十郎は1869(明治2)年、31歳の時に北海道に渡り、根室判官に就任。漁場の開発や灯台の建設、原野の開拓、稲作りの奨励などに力を尽くした。根室から札幌に移り、道全体の発展に貢献した。アイヌ人に対する差別に反対し、いつもアイヌ人の衣服を着ていたことから「アツシ判官」と呼ばれた。アイヌ問題などをめぐり上司と対立。38歳で帰郷し、その後は鶴岡で一生を終えた。
小説の中では、身分の上下で人間を差別せず、正義感にあふれ、強いリーダーシップを発揮した十郎の人間性が描かれている。タイトルの「北辰軸」は、北極星のように動かない不動の軸をもった十郎の生きざまから付けたという。
板垣さんは、「史料を読み解きながら、史実に基づいて物語を書いた。私がそうだったように、鶴岡にこんな素晴らしい人物がいたという事実を知らない人が多い。古里はもちろん、北海道の人たちにも十郎のことを知ってほしい」と話し、「次は札幌編も書きたい」意欲を燃やしている。
B6判、295ページ、良書センター鶴岡書店。1200円。
「アツシ判官」を描いた歴史小説を執筆した板垣さん
2005年(平成17年) 12月31日(土)付紙面より
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庄内観光コンベンション協会と県庄内総合支庁は、冬の新たなテーマ観光として、庄内を代表する冬の味覚の寒ダラの「どんがら汁」と雪を組み合わせた「雪灯篭(とうろう)と味覚散歩」を繰り広げる。松例祭でにぎわう羽黒山山頂と、来月に鶴岡、酒田両市で行われる「寒鱈(かんだら)まつり」に合わせて雪灯篭を設置し、庄内の冬の魅力をアピールする。
冬の味覚のどんがら汁を広く紹介し、冬の観光誘客を図っている寒鱈まつり。来年1月15日に開かれる鶴岡市の「日本海寒鱈まつり」は18回目、同21、22の両日に開かれる酒田市の「酒田日本海寒鱈まつり」は19回目を迎える。また、遊佐町と鶴岡市温海、由良でもそれぞれ開催され、庄内の冬を代表する観光イベントとして定着。毎年、県内外の観光客が訪れている。
そうした中、寒鱈まつりに付加価値を与える冬の庄内をアピールできる観光資源を模索。雪国の利点を生かし、彩りを演出するものとして雪灯篭を今回初めて企画した。
雪灯篭の設置は、鶴岡市の羽黒山山頂の出羽三山神社合祭殿の参道、鶴岡公園周辺と荘内神社境内、酒田市の山居倉庫敷地内の3カ所。大きさは90センチ四方で高さ1・8メートルで各所とも10基ずつを設置する。灯籠の周囲には高さ約30センチの行灯(あんどん)も10―30基をともす。羽黒山は今月31日の大みそかの午後5時から日付が変わる午前零時、鶴岡公園は1月14、15の両日、山居倉庫は同21、22の両日でともに午後5時から点灯する。
大みそかでの点灯を前に28日、羽黒山頂では地元のNPO法人蜂鼓山社中のメンバーや同協会や同総合支庁の職員約20人が参加して雪灯篭づくりが行われた。参加者たちは3、4人のグループとなり、高さ約1・8メートル、90センチ四方の型枠の中に雪を詰め踏み固めた「トーフ」を作った後、型枠を外してコテやミニシャベルで雪を削りだして灯籠の形に仕上げていた。
同協会は、山居倉庫は防災面と風の強さに配慮して雪灯籠を有機ELを使っての点灯を検討している。また、鶴岡公園では鶴岡市内の高校、山居倉庫では東北公益文科大に参加を呼び掛けて雪灯篭づくりを行う予定。「これまで雪を観光資源として生かしていなかった。どんがら汁を味わい、夜は雪灯篭の幻想的な明かりを楽しんでもらえれば。春の庄内ひな街道につなげる意味でも冬の観光誘客を充実させていきたい」と話している。
羽黒山山頂で行われた雪灯篭づくり