2006年(平成18年) 1月10日(火)付紙面より
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鶴岡、酒田、遊佐の3市町で8、9の両日、成人式が行われた。振り袖などの晴れ着に身を包んだ新成人たちが式典に参加し、先輩たちの激励を受け大人の自覚を新たにした。
〔鶴岡市〕
鶴岡市の成人式は旧市を対象にして9日、同市文化会館で行われた。新成人は1153人(新市1770人)で、このうち約800人が式典に出席した。
式典に先立ち、鶴岡土曜会混声合唱団が記念演奏を行い、「大地讃頌」など2曲を披露した。続いて富塚陽一市長が「本日は誠におめでとう。一人一人が自らに与えられた生命を大事にし、他人の生命を貴重に扱い、大切な思い出を重ねながら力いっぱいまい進してほしい」とはなむけの言葉を贈った。
これを受け、新成人を代表して山形県警の警察官の佐藤由喜さんが「社会人として自分は未熟。成人として人に頼るだけでなく、頼られる警官として日々努め、社会に貢献していきたい」と誓いの言葉を述べた。
会場には友人との再会を喜ぶ笑い声が響き、記念写真を撮る姿が多くみられた。式典中はざわつくなど全体的に落ち着きがなかった。
〔酒田市〕
酒田市の新成人は1476人(男732人、女744人)。8日に希望ホールで開かれた式典には約1050人が参加した。
式典では、地元在住の新成人たちでつくる実行委員会(大井佑子委員長)たちが中学時代の卒業アルバムをもとに制作した「思い出のスライド」を上映。体育祭や文化祭などなつかしい映像が流れると、会場には笑い声が広がった。
続いて阿部寿一市長が「合併して新酒田市となり、初めての成人式を迎えられることをうれしく思う。社会人、一個人として認められるため、基本的なルールである礼節を重んじることが大事。自らの可能性を信じて地道に努力し続けてほしい」と激励した。
これを受け、新成人代表の堀裕志さんと大井委員長が「成人できたのは両親や恩師、地域の人々のおかげ。社会人として責任と自覚を持ち、少しでも誰かの役に立とうと思う」と決意を述べた。
式典に出席した池田歩さん(酒田市升田)は「式典中、思ったよりみんな静かだった。大人になった自覚が出てきたのかも」と笑い、「自分も成人になったのだから、責任を持って何事でもやらないと」と決意を新たにしていた。
〔遊佐町〕
遊佐町の新成人は228人(男121人、女107)。8日、町中央公民館で開かれた式典には約200人が参加した。
式典では小野寺喜一郎町長が「みなさんの青春ドラマが感激、感動に包まれ、豊かな人生であることを願います」とお祝いの言葉を述べ、成人代表の冨樫あいさんが「社会の一員として現実を見つめ直し、社会に貢献していきたいと思います」と決意表明した。
この後、新成人たちはスライド上映で中学時代の思い出を振り返り気持ちを新たにしていた。
約800人の新成人が式典に出席した=鶴岡市
2006年(平成18年) 1月10日(火)付紙面より
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鶴岡市在住の民俗学研究者・梅木壽雄さん(78)が、地域に伝わる民話をまとめた「むかしあったけど 山形庄内の昔話」を自費出版した。20年以上前に庄内の語り部たちに聞き取り調査したものを中心に60話近くを収録。読み物としてだけでなく、民俗学の資料としても注目を集めそうだ。
梅木さんは中学校教員を務める傍ら、民俗学の研究にも傾注し、昭和30年代前半に庄内民俗学会に入会。現在は同会の幹事で日本民俗学会会員。民俗、歳事などに関する多くの著書がある。
県教育委員会が全県下を対象に1982年度から2カ年で実施した「昔話緊急調査」に参加し、当時の鶴岡市農村部や櫛引町の昔話の語り手たちを訪問、物語をカセットテープに録音した。その後、鶴岡市田川地区や豊浦地区の地域史の刊行に携わった機会などを利用し、庄内各地に伝わる昔話を調べた。
県教委の調査で収録したテープが本として日の目を見る機会に恵まれなかったことを憂い、「せっかく聞いた話を埋もれさせたくない」と、自費出版を決意した。「協力してくれた語り手たちが故人となってしまった。その気持ちを大切にするためにも文字として残したかった」という思いもあったという。
「むかし―」には荘内日報紙上に昨年4月まで「郷土の民話」のタイトルで掲載された28話に未発表の話を加えた59話が収録されている。庄内以外の人が読んでも理解できるよう、方言の部分にはルビを入れ、自作のイラストも挿入した。
収録されている昔話には「酒田の本間様」や「由良」など庄内地方の固有名詞も登場する。梅木さんは「一寸法師の鬼退治など同じ内容の物語は全国にあるが、地方ではなじみのある名前に置き換えて子供たちが関心を持ちやすくしたのでは」と想像する。
語りで伝える昔話の魅力について梅木さんは「アニメでは対話が成立しない。いろりを囲んだり、添い寝の時に話すことでふれあい、交流が生まれる」と話し、「子供たちは昔話を通じて、うそやいじめはいけないということを自然に学び、身につけた。今の時代にこそ必要なのかもしれない」とその効用を説く。
A4判、139ページ。1000円。荘内日報社印刷。荘内日報社本社の窓口のほか、鶴岡市内の書店でも扱っている。
語り手たちの昔話集を出版した梅木さん