2007年(平成19年) 3月8日(木)付紙面より
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酒田市山元の坂本集落に春の訪れを告げる神事「でごぐり百万遍念仏」が6日、集落の鎮守・坂本貴船神社で繰り広げられた。地区民が長さ約20メートルもあるワラ製の巨大な数珠「念仏綱」を床にたたきつけたり、体にこすりつけ豊作や身体堅固を祈願した。
「でごぐり」とは「たたく」という意味で、念仏綱をたたきつけることで邪気や病魔を追い払うとともに、豊作を願い念仏を唱える。以前は地区の若衆が総出で100万回も唱えたという。春を呼ぶ神事として同集落に古くから伝わっている。近年はワラをなえる人も少なくなり、参加者もお年寄りが中心だが、変わることなく毎年3月6日に行われている。
この日は午後1時半ごろ、地区民12人がワラをなって作った1・5メートルほどの綱を持って神社拝殿に集まった。持ち寄った綱を1本につなぎ合わせ念仏綱にした後、車座で「ナムアミダブツ」の念仏と太鼓、鐘の音に合わせて回し始めた。持ち寄った綱1本ずつに付いている「ナデ」と呼ばれる飾りの部分を床にたたきつけたり、体にこすりつけ祈願。わずか30分ほどで綱はぼろぼろになり、拝殿にワラくずが飛び交うようになった。
暖かかった前日までと打って変わり、雪が舞う天気となる中、寒風吹く拝殿ではアマチュアカメラマンらが盛んにシャッターを切っていた。
もとの長さに解かれた綱は各自が持ち帰り、ササやスギの葉、ネギなどとともに飾り、魔除けとして庭木などにつるされた。
念仏綱を床にたたきつけ豊作などを祈願した
2007年(平成19年) 3月8日(木)付紙面より
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県の福祉サービス第三者評価事業で、評価機関として認証を受けた東北公益文科大が6日、酒田市黒森の特別養護老人ホーム「ライフケア黒森」(高橋俊昭施設長、定員80人)で初の訪問調査を実施した。同事業で学校法人が評価機関となる例は全国的にも異例で、同大学の関係者は「独自の評価基準を研究して全国発信したい」と、大学ならではの取り組みに意欲をみせている。
福祉サービス第三者評価は社会福祉法に基づき、都道府県が公正・中立な第三者機関を評価機関として認証し、同機関が老人ホームや保育所など福祉施設のサービス内容を評価する制度。福祉サービスが従来の「措置」から、利用者が自由に施設を選び契約する形に移行する中、客観的な評価によって施設側ではサービスの質の向上、利用者側では自分に合った施設を選ぶ指標とする狙い。
県内ではこれまで、昨年3月に東北公益文科大と県社会福祉協議会(山形市)、同10月に山形市内のNPO法人の計3法人が評価機関の認証を受けている。現在、県内初の評価事業として東北公益文科大がライフケア黒森を運営する社会福祉法人正覚会(池田信也理事長)、県社協が庄内地方の別の社会福祉法人の調査を手掛けている。
この日は、東北公益文科大の渋川智明教授や評価調査者の大久保登喜雄さん、庄司敏明さんがライフケア黒森を訪れ、池田理事長や高橋施設長から聞き取り調査を行った。
調査項目は、▽基本方針と組織(経営の理念や計画が周知されているかなど)▽組織の運営管理(経営環境の把握や人事・安全管理、地域との連携など)▽適切な福祉サービス(利用者の満足度向上を図る仕組みなど)―の3分野の約50項目。事前に法人側が行った自己評価を細かく検証する形で聞き取りしていった。
項目ごとにABCの3段階で評価し、県に提出。県では各施設の意向を踏まえ、結果を公表する。
東北公益文科大の渋川教授は「福祉サービス評価の効果的な在り方を研究する一環で、評価事業に乗り出した。項目の立て方など、独自の評価基準を研究して現場に還元し、全国に発信していきたい」とする。研究は同大学公益総合研究所が中心になって担う考え。
正覚会の池田理事長は、第三者評価事業について「調査では、普段はあまり意識しない、サービスを支える土台の部分をきめ細かく指摘されるので、とても勉強になる」と話した。
県健康福祉企画課によると、学校法人が福祉サービス第三者評価の評価機関の認証を受けているのは全国的にも異例で、「評価機関の多様性という点と、研究機関としての活動にも期待」と話している。
ライフケア黒森で聞き取り調査を行う東北公益文科大の関係者(右側)