2008年(平成20年) 9月24日(水)付紙面より
ツイート
富山市などの経済、行政、議会関係者や郷土史家らで組織する「日本海北前ロマン回廊構想実行委員会」の馬場是久会長ら10人が22日、酒田市を訪れ、「北前船庄内」の新田嘉一社長(平田牧場会長)と懇談、北前船をキーワードに連携を深めていくことを確認し合った。
同実行委は、かつて北前船の寄港地として栄えた富山湾沿いの伏木(高岡市)、新湊(射水市)、岩瀬と水橋(富山市)の4地区の住民が互いの情報を交換し、まちづくりへの支援や文化・歴史遺産の保全などに結び付けようと5年前に設立された。シンポジウムの開催などを通して「富山の北前船」の普及啓発を図っている。
石川県、福井県、新潟県佐渡などの北前船寄港地を訪ねているが、東北以北は酒田が初めて。同実行委の犬島肇事務局長によると、一昨年に酒田市と秋田市で相次いで開催された「北前船コリドール構想」フォーラムと、それに続く北前船庄内の設立を報じる荘内日報の特集号を「富山の薬売り」を通じて入手したことがきっかけで、今年2月には実行委メンバーが合宿して同構想を勉強して備えてきたという。
一行は21日、鶴岡市で致道博物館などを見学。22日は酒田市に入り、市美術館や山居倉庫、酒田港、相馬樓などを回った後、平田牧場が所有する「寄暢(きちょう)亭」で新田氏と歓談した。
新田氏は、北前船で繁栄した時代をもう一度つくろうと、自らが中心になって広域観光振興会社「北前船庄内」を立ち上げ、さまざまな活動を展開して「行政ができないことをわれわれが行っている」と説明。馬場会長は「敦賀から北海道まで、掘り起こせば掘り起こすほど北前船の歴史的遺産が出てくる。このまま放置してはいけない」と語った。
また、「酒田港は県内企業の使用比率が低い」、「伏木・富山港の貿易量は増えているが一過性」といった課題を述べ合い、新田氏が「地場産業の育成が必要」と話すと、馬場会長は「それは大事」と賛同。「企業誘致は、長い目で見ると地元の役に立たないこともある」とした。
犬島事務局長は「北前船をキーワードに、地場産業同士の連携を呼び掛けたい」と提案。今後も交流を重ねていくことをお互いに確認した。
新田嘉一氏(左)と懇談する日本海北前ロマン構想実行委員会のメンバー