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2008年(平成20年) 11月18日(火)付紙面より

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鳥海の湧水 未来へ 保全・活用を探る 遊楽里でシンポジウム

 鳥海山がもたらす恵みと地域住民とのかかわりを、「水」と「くらし」をテーマに広い観点から考えるシンポジウム「鳥海山から考える地域とくらし」が15日、遊佐町吹浦の鳥海温泉「遊楽里」で開かれた。町民ら約140人が聴講。講演とパネルディスカッションを通し、鳥海山の湧(ゆう)水が果たす役割を学ぶとともに、今後どのようにして守り活用していくか方策を探った。

 総合地球環境学研究所、遊佐町、国立大学協会が主催。講演前半では同研究所の秋道智彌副所長ら4人が鳥海山の考古、地質、水環境など自然面について、後半では町鳥海山観光ガイド協会の齋藤孝副会長、庄内みどり農協遊佐営農課の佐藤秀彰統括課長、秋田県水産振興センターの杉山秀樹所長ら4人が歴史、暮らし、稲作など文化面に関する講演を行った。

 このうち佐藤統括課長は「ある面では、われわれ(稲作農家)が最も環境に負荷をかけている」とし、農薬使用を大幅に制限した稲作を町内の80%まで広げたいと話した。また、田んぼの水源になっている鳥海山の湧水地近くで岩石採取が進んでいる実情を紹介し、「ぜひ皆さんに関心を持ってほしい」と呼び掛けた。

 杉山所長は、淡水がイワガキの放卵、放精を抑制するため鳥海山の湧水が出る海岸のイワガキがおいしいことなどを解説し、「われわれは鳥海山の恵みを享受している。次の世代に必ず引き渡さなければならない」と強調した。

 続いて小野寺喜一郎町長、東北公益文科大の呉尚浩准教授、自然公園監理員の畠中裕之さん、月光川の魚出版会の本間正明さんらが「鳥海の湧水を未来につなぐ」をテーマにパネルディスカッション。小野寺町長は「町内では昔から岩石採取が行われてきた。環境保全と地域開発の関係をどうするか。なかなか決定打がない。住民のコンセンサスを得るため、専門的な議論が必要なのでは」と述べた。

 畠中さんは「湧水は利用しなければ荒れる。その意味では湧水も“絶滅危惧(きぐ)種”。守るのは誰でもない、われわれだ。単に保護だけを言うのではなく、いかに昔のように使うかを考えてほしい」と訴えた。

パネルディスカッションなどを通して鳥海山の恵みをどう守り活用していくかを探った
パネルディスカッションなどを通して鳥海山の恵みをどう守り活用していくかを探った


2008年(平成20年) 11月18日(火)付紙面より

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がん患者の安らぎは家族 「緩和ケア」市民公開講座 講演や事例で認識深める 鶴岡

 がん患者が直面するさまざまな問題の解決に取り組む医療「緩和ケア」に関する市民公開講座が15日、鶴岡市のマリカ市民ホールで開かれた。自らもがん治療の経験がある俳優の石坂浩二さんの講演や、鶴岡地域で進められている取り組みの紹介などを通じて緩和ケアについて理解と認識を深めた。

 鶴岡市と三川町を合わせた地域が本年度、厚生労働省のがん対策のための戦略研究「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」で全国4カ所のモデル地域の一つに選定されたのを受け、鶴岡地区医師会を中心に地域内の各病院や医療従事者らで組織した「庄内プロジェクト」(地域責任者・松原要一荘内病院長)が主催した。プロジェクトでは、早期からの緩和ケア推進、がん患者に在宅医療を提供するための医療・福祉・介護の連携ネットワーク強化などを進めている。モデル地域指定は2010年度までの3年間。

 市民公開講座は、緩和ケアについて紹介した今年6月の講座に続いて2回目。今回は、病院を退院後のがん患者の在宅治療・ケアが中心で、「地域で支えるがん緩和ケア―あなたらしく生きるために」をテーマにした。

 公開講座には市民や医療関係者ら約350人が参加。庄内プロジェクト地域責任者の松原荘内病院長が「医療機関相互が協力し、市民みんなで意識を新たにし、この地域により良いがん医療ができることを期待する」とあいさつ。鶴岡市名誉市民で国立がんセンター名誉総長の杉村隆さんがビデオメッセージを寄せ、「体の痛みだけでなく、がん患者の心の悩みを和らげるのが緩和医療。がんの話は深刻だけれども、心温まる公開講座になると信じている」と呼び掛けた。

 石坂さんは「よく生きる―緩和医療の原点」のテーマで講演。7年前に大腸がんと診断され、手術を経験した患者の立場から「がんと診断されて考えたのは、人間と他の動物が違うのは笑うということ。最期まで人間らしく笑っていたいと思った。治らなければ、がんと共存していくしかない。一緒に楽しく暮らせばいいと。ネクラでなくネアカがいい」と語り掛けた。

 緩和ケアについては「何も特別なことではない。自分がもしがんになったらどう生きるか、何をするかと、先立ってイメージしておくことが大事。そうすれば、緩和ケアを受ける側の考えが理解できるし、患者が求めるケアができる。この地域が、緩和ケアが進んでいる街だと言われるようになることを願う」と話した。

 また、国立がんセンター中央病院(東京)の土屋了介院長が、がん医療と緩和ケアについて講演し、「患者さんの心の痛みを取り除くことが大事で、人が人を癒やす。患者の一番の安らぎは家族。皆さん一人一人から、がん医療に携わっていただきたい」と呼び掛けた。

 引き続き、「住み慣れた自宅へ」をテーマにパネルディスカッション。今年4月から緩和ケア外来とともに、緩和ケアサポートセンターの業務を開始した荘内病院の医師と看護師、在宅治療とケアを担う開業医と訪問看護師らが、鶴岡地域の緩和ケアの取り組み状況を、さまざまな事例を挙げながら説明。座長の中目千之鶴岡地区医師会長が「多職種が協力し合って、がん患者に優しい街・鶴岡に向けて稼働していることを知っていただきたい」と結んだ。

患者の立場から講演した石坂さん
患者の立場から講演した石坂さん



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