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荘内日報ニュース


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2008年(平成20年) 4月10日(木)付紙面より

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森の時間 3 ―山形大学農学部からみなさんへ―

季節の詰め合わせ 小山浩正

 春が来た?、春が来た?、どこに来た?♪  ついに庄内に春が来ました。子供のころは、ただ口ずさんでいただけでしたが、かえって大人になってからの方が身にしみる歌詞です。特に、雪のない所で育った私は、北国で初めて春を迎えた時の感激を、今でもそのままかみしめます。身体の芯からこみ上げてくるこの心の躍動をどう表現すれば良いのでしょう。やはり「どこに来た?」と探がしている表現がぴったりのようです。

 雪解けの合間にフキノトウを見つけてはひとつ、コブシの蕾(つぼみ)がほころべばまたひとつ、名もなき草の緑にさえ心を躍らせ、ひとつひとつ確認するように萌え上がってゆく心。時折ぶり返す寒気が「油断するな」とささやき、再び胸襟(きょうきん)を閉じては三寒四温に戸惑う心細さ。そんなこんなも桜のころになったらこっちのもの。満開の桜に沸き立つものは、もはや戻ることのない季節を確信した心の解放なのでしょう。

 ところで、高名な高野辰之の歌詞にケチをつけるわけではありませんが、この童謡は後半がややおかしい。「山に来た、里に来た、野にも来た」と続くわけですが、全く逆です。春は、まず野に来て、やがて里に来て、最後に山に来るはずです。鶴岡公園が桜で満たされるころ、月山のブナの森はまだ深い雪に埋もれています。なにせ、これからスキー場が開くなんて、よそから来た者には信じられないことです。

 思えば、庄内はこの季節の多様さをもっと活(い)かして良いのではないでしょうか。海抜ゼロメートルの庄内浜から2000メートルの月山までがひとつに詰まっている。そんな土地柄は、どこを見回してもなかなかないはずです。うまくいけば7月ごろには1日でスキーと海水浴ができると言うではないですか。冬と春と夏を一度に味わえる季節の詰め合わせは何よりも誇れる宝物でしょう。庄内の「春が来た」は、とてつもなく長い時間を追いかけながら探すことができるわけですから。

 ブータンという九州ぐらいの小国がありますが、この国も亜熱帯の低地からヒマラヤの寒帯までがコンパクトに収まっています。それぞれに固有の植物が生えるので、狭い国土に驚くほど豊富な種類が見つかるそうです。その中には、古くから利用されている薬草も多く、アーユル・ヴェーダとして世界の注目を浴びる伝統療法の礎になりました。未知の薬用成分を持った植物はまだあるかもしれないとされ、先進諸国の垂涎(すいぜん)の的になっています。こうした自然的財産を背景に、ブータンは経済的な豊かさ(GDP)よりも国民総幸福量(GHP)を求めることを国是としました。

 私たちの庄内も、「海抜ゼロから2000まで」を合い言葉に、この多様な土地、多様な自然、多様な季節を糧に幸福量の追求を道標とするのもひとつの手ではないでしょうか。とりあえず、鶴岡公園のお花見に繰り出してほろ酔いの幸せを満喫しますか。

(山形大学農学部准教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)

鶴岡市(旧羽黒町)海谷森にて早春の月山を望む=1998年4月4日、自然写真家・斎藤政広撮影
鶴岡市(旧羽黒町)海谷森にて早春の月山を望む=1998年4月4日、自然写真家・斎藤政広撮影


2008年(平成20年) 4月10日(木)付紙面より

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酒田市の桜開花 平年より早く 鶴岡公園でも

 酒田測候所は9日午前、酒田市の桜(ソメイヨシノ)の開花を発表した。平年より7日、昨年より3日ともに早く、1953年の統計開始以来、5番目に早い。一方、鶴岡市も同日午前、鶴岡公園の桜の開花を宣言した。昨年より3日、77年以降の平均より4日、ともに早かった。

 酒田市では同測候所の職員が9日午前10時ごろ、同市若竹町一丁目の港南公園にある観測用の標本木で、5、6輪の花が咲いているのを確認した。仙台管区気象台が発表した酒田の開花予想は11日だったが、ここ数日の平均気温が平年を4度あまりも上回ったため、開花がさらに早まった。

 この日は青空が広がり、正午までに気温が5月上旬並みの18・3度まで上がった。この陽気に誘われて、幼い孫を連れた女性が咲き始めた桜を観賞しながら散歩するなど、同公園はのどかな雰囲気に包まれていた。

 同測候所によると、酒田では開花から満開まで4―5日間かかることから、今週末は最高の花見日和になりそうだ。


花見「床」の設営急ピッチで進む 鶴岡公園

ソメイヨシノが開花した鶴岡公園で花見シーズンの本番に備え、売店などの設営作業が急ピッチで進められている。

 「日本の桜の名所100選」に選ばれている同公園では毎年、大勢の花見客が訪れる。園内には「床」と呼ばれる食事処や露店など数十件が建ち並ぶ。

 同公園内の基準木の開花が確認された9日、北広場では「床」や露店の開店準備が盛んに行われた。設営作業に追われていた男性は「11日ごろの開店を予定していたが、桜が開花し何とか10日までには仕上げたい」と話した。

 同公園内では19、20の両日、「鶴岡桜まつり」が開催される。荘内神社境内で両日正午から午後3時までお花見茶会が催されるほか、桜をテーマにした短歌大会、写真コンテストなどが予定されている。        

過去5番目の早さで開花した酒田市港南公園のソメイヨシノ=9日午前
過去5番目の早さで開花した酒田市港南公園のソメイヨシノ=9日午前


2008年(平成20年) 4月10日(木)付紙面より

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山野草の盗掘相次ぐ 鶴岡市大山地区高館山や下池 防止へ体制整備急務

 春の山野草シーズンを迎え、鶴岡市大山地区の高館山や下池などでは植物の盗掘が相次いでいる。8日、地元の「尾浦の自然を守る会」の会員がパトロール中、山野草を持ち帰ろうとした人を見つけ、植え戻した。ラムサール条約への登録手続きが進められている中、地元を中心に貴重で豊富な自然が残る高館山周辺の環境保全、盗掘防止への体制整備が急務となっている。

 高館山周辺の国有林は、保健保安林、干害防備保安林に指定されているため、許可を得ずに植物採取することを禁じている。違反した場合は法律によって罰せられる。林道入り口などには庄内森林管理署による「採取禁止」を告知する立て看板が設置されているが、盗掘は依然として少なくない状況だ。

 下池近くに住む写真家で尾浦の自然を守る会の宮川道雄さんによると、数年前までは植物を扱う業者が入り込んでいた。同会員やパークボランティアによるパトロールによって減ったが、最近は里山散策や山野草のブームもあって一般の人が趣味で持ち去るケースが増加しているという。

 8日の盗掘は、宮川さんがパトロール中、女性の2人連れがポリ袋に花を入れて持ち帰ろうとしているところを発見した。「花が入ってますよね」と声を掛け、中を見せてもらうとショウジョウバカマやカタバミ、キクザキイチゲ、カタクリなどがあった。いずれも根が付いていた。「植物採取は禁止だと注意したら、『知らなかった』と言って置いていった」(宮川さん)。その後、宮川さんが植え戻したが、高館山山中には、山野草の群落周辺で足跡や掘り出した跡が多数あったという。

 一方、6日には上池でも盗掘が発見され、宮城県の男性が鶴岡警察署に検挙された。「出羽三山の自然を守る会」理事で、東北森林管理局のフォレストボランティアを務める長南厚さんが、アズマイチゲなどの山野草を採取している男性を発見。埋め戻すよう注意したところ無視して立ち去ろうとした。悪質だったため110番通報したという。

 宮川さんはラムサール条約登録湿地となった後、訪れる人が増大することを踏まえ、「最近は個人の楽しみで採取する人が増えているが、皆がそうした考えだと高館山から山野草がなくなる。ラムサール条約への登録で心ない人たちも増え、ひどい状態になることが予想される。地元が中心となって盗掘防止や環境保全体制を整えなければならない」と訴える。

採取が禁止されている高館山で盗掘された根付き山野草=宮川さん提供
採取が禁止されている高館山で盗掘された根付き山野草=宮川さん提供



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