2009年(平成21年) 5月17日(日)付紙面より
ツイート
鶴岡市の「少年少女古典素読教室」の開講式が16日、同市の致道博物館で開かれ、10月までの半年間、18回にわたる学習がスタートした。
素読は、旧庄内藩校・致道館が奨励した学習の一つ。中国古典の漢文を大きな声を出して読むところに特徴がある。1968年度から2カ年、同市が当時の文部省の文化財モデル地区指定を受けたことをきっかけに教室が始まった。以来、市中央公民館と致道博物館、致道館文化振興会議が共催で毎年開いている。
今回は、小学3年から中学3年までの男女26人が参加。新規受講と受講歴2年以上の2つのクラスに分かれ、第2、第4土曜に学習する。夏休み期間中には6日連続の早朝教室があるほか、野外での2回の史跡巡りも予定されている。
致道博物館御隠殿で行われた開講式では主催者が「論語には人間が生きていく上で大事なことが書かれている。たくさん読んでいくうちに内容を理解してもらい将来につなげてほしい」などとあいさつした。
この後、受講生が一人ずつ自己紹介し、これからの学習活動に向けた誓いを新たにした。素読の実技は次回講座から行われる。
開講式で受講者と講師たちが対面した
2009年(平成21年) 5月17日(日)付紙面より
ツイート
家族分の飯米さえ収穫できるか分からない―。鶴岡市大網の七五三掛(しめかけ)地区の地滑り災害で、自主避難している集落の住民や農地の耕作者らを対象にした現地説明会が15日夜、大網地区の朝日東部公民館で開かれた。地滑りが収まらない状況に住民や農家からは「農地の状況は悪くなる一方だ」「地滑り個所は拡大している。県で対応し切れるのか疑問だ」など窮状を訴える声が相次ぎ、対策工事を進める県庄内総合支庁は「県の力で足りないとなれば、国の力を借りて対策を講じていきたい」と説明した。
地滑りが依然として続いていることや、最初の自主避難要請から1カ月以上経過した上、水稲の田植え期を迎え、水田の傾斜や地割れ、段差など農業生産基盤への被害の拡大が明らかになってきたことを受け、同支庁や鶴岡市などが説明会を開催。住民や耕作者ら約20人と行政側から約20人が出席した。
観測と応急対策工事を進めている同支庁が地滑りの状況を報告。4月以降に新たな亀裂が生じた個所が見つかり、今月12日以降も最大で1日5センチ程度の亀裂拡大が観測されるなど地滑りが続いていることを示し、「厳重警戒レベルにある」と説明。恒久対策工事については「本年度中に入りたい」としたものの、滑り面を把握するための調査ボーリングが地滑りの影響などで予定通り進まないため「地滑りのメカニズムをまだ解析できず、本格工事にどれだけの費用と期間が必要か分からない」とした。
自主避難している住民からは「知事は現場を見たのか。地滑りの面積が拡大している中で、県で対応できるのか知事に聞いてみたい。国の直轄事業で対応すべきだ」「県の対応は遅すぎる」など、地滑りが拡大していることへの不安と県の対応への不満の声が上がった。
七五三掛集落の全7世帯に対する鶴岡市の生活支援対策の説明もあり、市朝日庁舎は避難している世帯の移転先住居の賃貸料支援など当面の支援対策費を6月補正予算に計上する予定となっていることを報告。「被害が広範囲なら国や県の支援があるが、当面は市独自の支援策を検討している」とした。自主避難要請が出されていない世帯の住民は「住宅に亀裂が入り、窓にもすき間ができてきた。このままでは冬に暮らせるかどうか。不安ばかりが募る。避難する住宅をあっせんしてもらえないか」と要望。市朝日庁舎は、避難が長期化することを想定し「避難世帯の屋根の雪下ろしをはじめ、集落全体の越冬対策も考えねばならない」と述べた。
自主避難をしている農家の渡部俊一さん(55)は、耕作する水田1・8ヘクタールのうち1・2ヘクタールを委託に切り替えた。「移転先から通って農作業をするのは心身ともにつらい」と語った。残る0・6ヘクタールも農地が傾いていて苗の移植ができない水田が半分以上あると話し、「状況は日々悪くなる。飯米さえも収穫できないかもしれない。生長するか分からない苗を植えながら泣きたくなった」と肩を落とした。
七五三掛地区の地滑り災害では、集落の7世帯のうち5世帯に自主避難要請が出され、昨年作付けした水田7・4ヘクタールの半分以上で本年産の栽培ができない状況となっている。集落の世帯の間からは、これまでの近隣関係を維持したいとの考えから、大網地区内に集団移転するための支援を求める声も上がっている。
地滑り災害の状況が報告された説明会。住民からは農業や避難生活長期化への不安の声が相次いだ