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2011年(平成23年) 12月13日(火)付紙面より

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森の時間47 ―山形大学農学部からみなさんへ―

外来種バスターズ 林田 光祐

 大山下池のほとりを歩いている方は気づかれていると思いますが、都沢湿地に水路や歩道が整備されました。これから自然学習交流館も着工し、いよいよ庄内自然博物園構想が実現の第一歩のところまで来ています。

 この構想の柱は、湿地や池や森林などの自然のフィールドです。せっかく多くの子供たちや市民の皆さんが学びや遊びに来ても、自然環境が荒れてしまっていては魅力的なプログラムにはなりません。大山のこの地域は森と池と湿地が隣接する恵まれた立地なので、潜在的には多様な生き物でにぎわうはずですが、現在は必ずしも本来の豊かな自然環境とはなっていません。

 その原因のひとつと考えられるのが外来生物です。外来生物とは外国や国内の他の地域から人によって持ち込まれた生き物のことです。農作物の多くも外来生物であり、有益なものもあるのですが、人の管理のもとから逃れて野生化し、元からいる在来の生物たちの存在を脅かして、自然を壊してしまう恐い存在になってしまう生き物を侵略的外来種と呼んでいます。その代表種が北米原産のウシガエルとアメリカザリガニです。

 アメリカザリガニは今や最も身近な水辺の生き物のひとつとしてあげられるだけでなく、年配の方が子どもの頃からいたなじみ深い生き物です。しかし、そんなに危険だと聞いたことがある方は少ないでしょう。それもそのはずです。実は最近わかってきたことなのです。

 日本の池や湖の生態系をめちゃくちゃに壊した侵略的外来種と言えばブラックバスが有名です。魚や昆虫などあらゆる水生動物を食べてしまうため、各地で在来の魚や水生昆虫が絶滅の危機に瀕し、駆除活動が実施されました。そんな中で、ブラックバスを駆除したらアメリカザリガニが激増し、さらにトンボ類や水草類が消失して駆除前よりも悪化するケースも出てきたのです。これは、ブラックバスの出現でこの池の生物相が単純になってしまったところに、その後アメリカザリガニを食べるブラックバスを駆除したため、アメリカザリガニが急増してしまい、それまで目立たなかったアメリカザリガニの生態系への悪影響が深刻化してしまったのではないかと考えられています。

 ウシガエルとアメリカザリガニもこれと似たような関係にあります。そのため、都沢湿地ではウシガエルとアメリカザリガニを一緒に捕獲して取り除く活動を2年前から続けています。この外来種バスターズの目標は、両種が侵入する以前のように多種多様な在来の水草や水生昆虫、トンボ類が生息する自然環境をよみがえらせることですが、外来生物によって一旦切れてしまった在来の生き物たちの絆をつなぐことは容易ではありません。

 しかし、少しでも以前の生き物たちのにぎわいを取り戻すためには地道にこの活動を続けることが大切です。時には捕獲したカエルやザリガニの美味しい料理を楽しみながら、今の時代にあった人と自然との新たな絆を多くの皆さんと一緒に築いていきたいと思います。来年の春が待ち遠しい!

(山形大学農学部教授、専門は生物多様性の保全を主とした森林生態学)

来年の春を待つ都沢湿地=自然写真家・斎藤政広(2011年11月17日撮影)
来年の春を待つ都沢湿地=自然写真家・斎藤政広(2011年11月17日撮影)



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