2011年(平成23年) 3月1日(火)付紙面より
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鶴岡市黒川地区に伝わる黒川能(国指定重要無形民俗文化財)をろうそくの明かりだけで鑑賞する「黒川・蝋燭(ろうそく)能」が26日、同地区の春日神社で行われ、県内外の人たちが荘厳な雰囲気の中で農民芸能を楽しんだ。
黒川能最大の舞台である王祇祭(2月1、2日)は氏子の祭事であるため、一般の入場枠は少ない。蝋燭能は一般に能をゆっくり鑑賞してもらおうと、地区住民で実行委員会(佐藤俊広実行委員長)をつくり、1994年から毎年この時期に開催。郷土料理を食べながら能役者と交流する会も併せて開き、黒川の文化や風土を濃密に体験する機会となっている。
18回目の今回は、黒川能上座(斎藤賢一座長)が能「山姥(やまんば」」、狂言「釣女(つりおんな)」、同下座(上野由部座長)が能「帳良(ちょうりょう)」をそれぞれ演じた。
正午すぎの開演ながら、社殿内は閉め切られ真っ暗。神事に続き、舞台周りの一貫目ろうそくがともされると、厳かな雰囲気に包まれた。上座の「山姥」では、地謡と囃子(はやし)ゆったりと流れる中、後ジテが本性の山姥の姿で現れ、舞うと、観客は引き込まれるように見入っていた。
今回は、地域文化情報誌「クレードル」を発行している地域プロデュース会社・出羽庄内地域デザイン(鶴岡市、大島文雄社長)が企画した着地型観光ツアーの一環で、首都圏と仙台圏の約30人も鑑賞した。また、仏像に興味を示す「仏女」ならぬ「能女」を思わせる若い女性もいて、熱心に鑑賞していた。
2011年(平成23年) 3月1日(火)付紙面より
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酒田に古くから伝わるつるし飾り「傘福(かさふく)」を集めた展示会「湊(みなと)町酒田の傘福」が27日、酒田市日吉町一丁目の国登録有形文化財「山王くらぶ」で始まった。鮮やかな色彩の布細工が数多くつり下げられた傘福を見ようと県内外から大勢の観光客が訪れ、明治時代中期に建てられた元料亭の大広間に飾られた豪華でかわいらしい傘福の数々に、感嘆の声を上げている。
傘福は、江戸時代に酒田に伝わったとされる。着物の端切れや不要になった布団の綿などを使い、イヌやウサギ、エビなどの動物、さまざまな花や桃、大根、ニンジン、カブなどの植物、きん着や宝袋、小づち、座布団などの縁起物を作製。それらを一本のひもに結び付け、周囲を赤や緑の幕で覆った傘の骨につり下げる。布細工は、子供の健やかな成長や女性が健康で一生送れるようにとの願いを込めたもので、ひなまつりの際に神社などに奉納したという。
展示会は、酒田商工会議所女性会が2005年、設立25周年記念事業の一つとして企画。伝統工芸品を復活し次代に引き継ぐとともに、「庄内ひな街道」に一層の彩りを加えようと始めた。
6回目の今年は、高い大広間の天井から床に届くような長いひもに、全部で999個の布細工を結び付けた超豪華な「野立て傘福」2本や、布細工の代わりに純白の折り鶴をつり下げた清楚な傘福、紅花染めの布を使った淡い上品なピンク色の傘福などを展示。
このうち折り鶴の傘福は、同市大宮の白鳥神社に大正時代に奉納されたという絵馬に描かれていた傘福を復元・初展示したもの。絵馬と同じように傘福山車(だし)、宝物傘福とともに飾った。 また、傘福とともに「日本三大つるし飾り」とされる伊豆稲取(静岡県)の「雛(ひな)のつるし飾り」と柳川(福岡県)の「さげもん」をはじめ、長野県上田市や秋田県羽後本荘市矢島など日本各地のつるし飾りも展示している。
テレビでこの催しを知り、東根市から夫と娘の3人で訪れたという高梨三枝子さん(57)は「色使いがきれい。布細工一つ一つはかわいらしいのに、たくさん集まるととても豪華。感激した。来て良かった」と話していた。
展示は4月3日まで。期間中は無休で、午前9時から午後4時半まで開館する。入館料は大人500円、高校生・大学生160円、中学生以下80円。問い合わせは酒田商工会議所女性会=電0234(22)9311=へ。期間中は会場直通の携帯電話=090(7320)0682=でも対応する。