2014年(平成26年) 9月11日(木)付紙面より
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来春の新規高卒予定者を対象にした就職試験が16日に始まるのに合わせ、県庄内総合支庁の佐藤嘉高支庁長らが9日、酒田市の酒田商工会議所を訪れ、一層の求人を要請した。
酒田公共職業安定所(原清文所長)によると、7月末現在で管内(酒田、庄内、遊佐3市町)の来春新規高卒者に対する求人数は583人。前年同期を201人(52・6%)上回っている。一方、来春高卒者のうち就職希望は417人で、このうち県内就職を希望しているのは256人。県内他地域に比べて依然として低い水準にとどまっており、人口減に歯止めをかけるためにも若者の地元定着が大きな課題になっている。
そこで、新規高卒者の就職試験が16日にスタートするのを前に、同総合支庁が酒田、鶴岡両公共職業安定所、高校教育研究会進路指導部会と共に経済団体を訪れ、求人の積み増しを要請した。
9日は、原所長、同指導部会飽海支部長校の酒田南・西原忠善教頭と一緒に酒田商議所を訪れた佐藤支庁長が「特に事務系、サービス業のさらなる求人をお願いしたい」などと述べ、求人枠拡大などに配慮を求める要請書を佐藤淳司会頭に手渡した。佐藤会頭は「全国的な人手不足で、『求人しなくては』という機運が高まっている。地元への定着率向上は時間がかかるかもしれないが、改善しなくてはいけないもの。機会をみて会員企業に話し掛けをする」と応えた。
今月12日には佐藤支庁長と岡崎充良鶴岡公共職業安定所長、同指導部会田川支部長の柴田曜子鶴岡南校長が、鶴岡商議所と出羽商工会で同様に求人要請する。
2014年(平成26年) 9月11日(木)付紙面より
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出羽商工会青年部朝日支部(難波裕朋支部長)主催の芋煮会が10日、鶴岡市砂川のワインパーク戸沢で行われ、招待された朝日保育園(渡部祐子園長)の園児らが自然体験や芋煮を楽しんだ。
旧朝日村商工会青年部時代から毎年開催している伝統事業で、地元の保育園児に自然体験を楽しんでもらおうと社会貢献事業の一環として実施している。
この日は朝日保育園の年長児26人を招待。初めに仮設プールにニジマス約50匹を放して園児がつかみ取りに挑戦した。園児たちは「あっちに行った」「逃げられた」などと歓声を上げ、元気に水しぶきを上げながらニジマスを追い掛け、捕まえていた。ニジマスを捕まえた渡部里彩ちゃん(5)は「魚は逃げるのが早くて捕まえるのが難しい。芋煮と流しそうめんも楽しみ」と笑顔で話していた。昼食では、流しそうめんを行い、園児たちが調理を手伝った芋煮や捕まえたニジマスの塩焼きとともに楽しんだ。
難波支部長は「子どもが少なくなる中、これからも自然体験の場を提供できるように続けていきたい」と話していた。
2014年(平成26年) 9月11日(木)付紙面より
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飛島の野生ナシの謎 林田 光祐
実りの秋。山ではマイタケやナメコなどのきのこ、サルナシやヤマブドウなどの果実が楽しめる季節です。山で味わえる果実のなかで、なかなか出会えないのが野生のナシの実です。日本ではヤマナシ、イワテヤマナシ、マメナシなどの野生ナシが知られていますが、同じ里山に生育するクリとは異なり、どこにでもある樹木ではありません。それでも、「クラムボン」が出てくる宮沢賢治の短編童話「やまなし」であれば、ご存じの方も多いと思います。秋の終わりに谷川にすむ蟹の親子の上に落ちてきた、いい匂いがしてお酒になる実が「やまなし」です。野生ナシが多く生育する岩手県の北上山地では、果実を冬の保存食として利用するだけでなく、その材もさまざまに利用され、野生ナシは人々の暮らしや文化に欠かせない樹木です。この野生ナシを比較的容易に見つけることができる場所が庄内にもあります。日本海に浮かぶ飛島です。
飛島は周囲10キロほどの小さな島ですが、県内ではここでしか見られない希少種が多い生き物のホットスポットです。トビシマカンゾウのように飛島の名前がついている生物も多くあります。トビシマナシもその一つで、昭和初期に飛島の固有種として記載されています。果たしてどんな樹木なのか、学生たちと飛島の野生ナシを調べることにしました。
ナシの白い花が咲き誇る5月中旬に飛島全域を歩き回り、開花していない個体も含めて地図に位置を書き込んでいくと、約100本のナシの木が見つかりました。ナシの仲間は果実の特徴で区別されているので、実が成熟する秋に一本一本果実を調べました。全体の形が球形か洋なし形か、果実の先にがく片が残っているかどうか、全体の色が黄褐色か黄緑色か、この組み合わせで分類します。写真のナシは、球形でがく片が残る黄褐色のイワテヤマナシ型です。こうやって調べていくと、次々と異なる6タイプの野生ナシが見つかり、中間のタイプもありました。そこで、野生ナシ類の遺伝的研究を行っている神戸大学農学部の先生にDNA解析をお願いしたところ、遺伝的にも多様な系統のナシ類が交雑している実態が見えてきました。系統が異なるナシ類が狭い島の中で複雑に交雑することで、トビシマナシなどの特異な形態をもつナシが生まれたのかもしれません。
遺伝解析の結果から、飛島の野生ナシは人との結びつきを考える必要が出てきました。現在、飛島のナシの木は約9割が森林の中か林縁部に生育しています。ところが、40年前に撮影された航空写真と現在のナシの木の分布を照らし合わせると、約9割が当時の畑の中か畑と森との境界地でした。どちらで見ても半分以上の個体が畑と森林との境界に生育していたことになります。このことから、飛島の野生ナシは純粋な野生ではなく、人の手によって育てられた可能性もあります。
そこで、飛島の年配の住民の方々に尋ねてみました。すると、お盆の時期に仏壇の飾りの一つとして利用する方はいましたが、子供の頃、学校帰りに時々食べていたぐらいで、積極的に利用されていないようです。また、ほとんどのナシは植えたものではなく、自然に生えたものだということです。もっと歴史をさかのぼらないと人との結びつきは見えてこないのかもしれません。謎は深まるばかりです。この謎を解くカギをご存じの方は情報をお寄せ下さい。
人との結びつきを失った飛島の野生ナシがこのまま多様性を保持して存続することは難しいと思われます。良い香りや味をもつ果実もあることから、飛島ならではの野生ナシの活用方法を新たに考えてみてはどうでしょうか。
(山形大学農学部教授、専門は森林保全管理学)