2017年(平成29年) 11月24日(金)付紙面より
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庄内柿の海外輸出の取り組みが進められている。日持ちが良く、アジア圏で好まれる柿は輸出の可能性を秘めるが、流通コストや知名度といった課題も多い。庄内柿が“金の果実”となるのか、官民挙げた取り組みが注目される。
「早生種で旬も早い和歌山産といった日本産が海外に出回る中で、時期の遅い庄内柿のおいしさがどう現地で理解されるか」。今月14日夕、庄内空港から飛行機を使った初めての農産物の輸出となった庄内柿を発送した三川町の青果物仲卸、元青果特販部の長島忠特販次長が話す。庄内柿は羽田空港を経由し、15日に沖縄・那覇空港に到着。16日にはシンガポールのチャンギ国際空港まで空輸され、18、19の両日に現地のスーパーマーケットで試食販売された。
人口減少による国内市場の長期的な縮小が見込まれる中、グローバル化で拡大する海外市場への輸出ビジネスが注目を浴びている。庄内でも官民で取り組みが進むが、巨大なマーケットを前に手探り状態が続く。
3年前からマレーシアへ庄内柿を輸出している庄内たがわ農協でも今季、12月初旬まで2回にわたり、5キロ入り220箱、計約1トンを輸出する計画。4年目となる取り組みだが、同農協管内の庄内柿の取扱量が2500―3000トンという中で、「輸出の実績は積み重ねてきたが、数量は伸びない」と奥山和樹園芸特産課長。県や市の補助金を活用し現地でのプロモーション活動などを行ってきたが、今後の展開について頭を悩ませる。
農産物輸出で鍵となるのが、輸送ルートとコスト。県では昨年12月、沖縄国際物流ハブを活用した海外輸出を目指しヤマト運輸、ANA総合研究所との連携協定を締結。重要拠点となっている庄内空港からも羽田空港経由で数日でアジア各国への輸送が可能だ。従来の船便と比べ、10日以上短縮されるメリットがあるが物流コストは跳ね上がる。
今回、元青果が庄内空港から発送したのは、鶴岡市産のサンプルも含めた大玉36ケース(1ケース5キロと7・5キロ入り)計245キロ。首都圏の商社が間に入り、沖縄物流ハブで他県産の青果など一定量を確保した上で間接輸出という形で実現した。長島特販次長は「(空輸は)鮮度など配送リスクが減る利点がある。量が確保できれば庄内空港からの輸出も可能性がある」と話す。実際、トラック輸送で東京・太田市場まで運び、船便で輸出される庄内たがわ農協では、固さが好まれる現地で商品に足がつき、廃棄となった苦い経緯がある。
県ASEAN(東南アジア諸国連合)貿易コーディネーターでシンガポール在住の小里博栄さんは先月25日に開かれた庄内地域の官民が参加する「庄内地域農水産物等輸出促進会議」の席で、「世界を取り巻く輸出状況は思っている以上に熾烈(しれつ)な競争。もっといろんな取り組みをしないと」とアドバイス。日本食の現地化が進む状況にも触れ、「今後10年、20年と世界で戦うためのもっと踏み込んだ戦略が必要」と日本・庄内産と一目で分かるパッケージの重要性などを説いた。
日本食の需要が高まる中で、「見た目とおいしさは評価されている」(奥山園芸特産課長)という庄内柿。輸送ルートを確立し、ブレークスルーを期待したい。
2017年(平成29年) 11月24日(金)付紙面より
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来年の「明治維新150年」を前に、庄内と西郷隆盛(南洲)の深い関係に光を当てる「徳の交わり」全国チャリティ吟詠大会が23日、酒田市の東北公益文科大公益ホールで開かれた。地元内外の詩吟愛好家らが、旧庄内藩士が西郷の言葉をまとめた「西郷南洲翁遺訓」などの漢詩を吟じたもので、西郷の故郷・鹿児島市で精神修養に遺訓を取り入れている日本空手道少林流円心会の味園博之会長(78)も特別参加し、遺訓を称揚する和歌などを吟じた。
庄内では戊辰戦争後、西郷が寛大な戦後処置を指示したとして、酒井忠篤藩主らが鹿児島に行き、西郷に学び、中老・菅実秀は西郷と「徳の交わり」を結ぶことを約束。その後、菅が中心になって遺訓をまとめ全国に配った縁から、庄内と鹿児島の交流が続いている。
今回は、公益財団法人荘内南洲会(水野貞吉理事長)と庄内地方の詩吟愛好団体などが実行委員会(池田青水実行委員長)をつくり開催。庄内を中心に約170人が出演し、西郷や菅、忠篤の漢詩12題の中から各1題を選び、独吟や合吟などで計92演目を披露した。
最も人気があり、42演目で吟じられた「偶感」は遺訓に載る西郷の七言絶句で、「幾たびか辛酸を歴て志始めて堅し」で始まり「児孫の為に美田を買わず」で終わるもの。出演者は西郷の心に思いをはせるように朗々と吟じた。
味園さんは、遺訓や荘内南洲会をたたえる自作の和歌と漢詩を吟じた。約50年前に遺訓を知り、以来、空手の精神修養に遺訓の暗唱を取り入れているという。味園さんは「遺訓は青少年の教育に最適。鹿児島では来年の『西郷どん』(NHK大河ドラマ)で経済効果がうんぬんと盛り上がっているが、遺訓が全国に広がるきっかけになればうれしい」、荘内南洲会の水野理事長は「われわれも鹿児島を訪ねるたび、味園さんの道場を訪れ、子どもたちが遺訓を暗唱する姿に感動して帰ってくる。今後も鹿児島との交流を深めていきたい」と話した。