2017年(平成29年) 11月30日(木)付紙面より
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山形大農学部などが地域内で食料自給圏をつくり農村の活性化を目指す「庄内スマート・テロワール」の収穫感謝祭が28日、鶴岡市のグランドエル・サンで開かれ、実証プロジェクトの成果報告、耕畜連携や農工一体で取り組んだ食肉加工品の試食が行われた。報告の中では、同市羽黒町手向の水呑沢地区にモデル圃(ほ)場を設け、畑輪作に取り組む計画が示された。
実証プロジェクトは、大手食品メーカー・カルビー(東京)の松尾雅彦相談役が提唱する「スマート・テロワール」の実現に向けた取り組みで、農村に宿る魅力的な個性を引き出し磨くことで、豊かな地域共同体をつくり食料自給圏を確立することを目的にしている。
同学部は松尾相談役の支援を受け2016度から寄付講座「食料自給圏(スマート・テロワール)形成講座」を設置。地域内で食料自給圏をつくり農村や地域が地産地消の経済を発展させ、自立できるようにするビジネスモデルの構築を探っている。
成果報告では、松尾相談役が実証プロジェクトの意義を説明。農学部の研究担当者が畑輪作体系構築に向け、同学部付属やまがたフィールド科学センター(高坂農場)で実践しているジャガイモ、大豆、小麦、飼料用トウモロコシの生産状況を紹介した。
また、生産した農産物の規格外品を飼料に活用して豚の肥育試験を行う耕畜連携により、東北ハム(鶴岡市)が豚肉をハムやソーセージ、ベーコンに加工して庄内地域のスーパーで試食販売し、消費者から高評価を得たことも報告された。地域内飼料による豚の肥育の飼料自給率は90%を超えている。
耕畜連携、農工一体、地産地消による庄内スマート・テロワールの形成に向けこの日、農業者や加工、流通業者も加わった「庄内自給圏をつくる会」の準備会を発足。将来ビジョンに関連して手向の水呑沢地区で19年から、規模を拡大した畑輪作の取り組みを進める構想も報告された。
成果報告を兼ねた収穫感謝祭は、山大農学部と県農業会議が主催。試食会ではハムやソーセージのほか、今年収穫したジャガイモや大豆、小麦を使ったコロッケ、豆腐、パンなどが参加者約150人に振る舞われた。
2017年(平成29年) 11月30日(木)付紙面より
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酒田市松山地域で28日、旅行代理店の関係者を招いた視察ツアー「羽州松山城下町めぐり」が開かれ、旧庄内松山藩の歴史を伝える寺社仏閣や、地域の特産品による昼食など、地域の見どころを体感した。
松山地域は昨年1月、地域内の文化財や関連の活動が県の「未来に伝える山形の宝」に登録され、住民が「松山の宝推進協議会」(榎本和介会長)を組織。市と連携して多彩な地域活性化事業を展開している。今回はその一環で、同協議会と市が初めて実施。地元内外の旅行代理店や観光関連の計約20団体の約30人が参加した。
一行はバスに乗り1日がかりで、旧松山町出身の哲学者・阿部次郎の生家「阿部記念館」(山寺)をはじめ、庄内松山藩の歴代藩主らを祭る心光寺(北町)、徳川家康の長男・信康の霊を祭る中山神社(内町)、眺海の森の天体観測館「コスモス童夢」、国指定名勝庭園・蓬莱園がある総光寺(総光寺沢)など8カ所を巡った。
このうち心光寺では丸山寛明住職から、「酒井家が庄内に入部して間もない寛文6(1666)年に開山した。位牌(いはい)堂には徳川家の位牌もあった。酒井家は徳川四天王の一人で、北の抑えのため庄内に来た。その子孫が庄内松山藩の藩主になった」など寺の由来や地域の歴史を解説。参加者は位牌堂を参拝し、厳かに手を合わせた。その後の昼食は眺海の森の「公共の宿さんさん」で、焼き麩(ふ)など地域特産品を使った新メニュー「戊辰松山膳」を食べた。
松山の宝推進協事務局の関係者は「松山の魅力を発信し、旅行商品の造成につながり、一人でも多くの観光客に来てもらえれば」と期待を寄せていた。