2017年(平成29年) 12月6日(水)付紙面より
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2015年3月に閉校した鶴岡市の旧小堅小学校で長年使われてきたグランドピアノが、鶴岡市立加茂水族館の大型水槽「クラゲドリームシアター」の前に置かれることになった。2日夜、同水族館で開かれたコンサートでお披露目。クラゲの揺らめく新たなステージを得て、再び音色を響かせ始めた。
小堅小は、少子化に伴う市の学区再編計画に基づき、15年3月で閉校。翌4月からは三瀬、由良の両小学校と統合し、旧三瀬小を校舎に「豊浦小」として再出発した。小堅小のピアノは30余年前から音楽の授業や式典などで使われてきたもの。閉校した小学校の備品は別の施設で再利用されるケースもあるが、同校のピアノは引き取り手がなく、音楽室で保管されていた。
今回のピアノの移管は、同館でのライブコンサート開催が決まった後、奥泉和也館長がコンサート8日前の先月24日になって「市の施設で使っていないピアノがあるかも」と思い付き、市に問い合わせたのがきっかけ。年数もそれほどたっていない小堅小のピアノに白羽の矢が立った。市では、教育委員会から市の観光施設を管理する観光物産課へのピアノの所管換え手続きを急きょ行い、コンサート2日前の11月30日に小堅小から水族館へ搬送した。
前日の1日に調律を担当した鶴岡楽器の大沼祐介さん(39)は「ほこりをかぶって音楽室にぽつんとあり、かわいそうだった。なかなかのおばあちゃんで鍵盤の戻りや音の力も心配した」と振り返る。
コンサートではブルースギタリストの高谷秀司さんとシンガー・ソングライターの小川紗綾佳さんによる音楽ユニット「神雅氣―shinki―」が出演。奥泉館長がピアノの来歴を紹介した。大水槽の前に集まった観客約60人の中には、旧小堅小ゆかりの人も。閉校時に教頭だった中村ちか子さん(55)=庄内教育事務所主任指導主事=は、「輝きを取り戻したよう。地域の人もピアノも喜んでいると思う」と感激した様子で演奏を聴いていた。
奥泉館長は「小堅と加茂とどちらも海でつながっている地域。素晴らしいピアノが来て良かった」と話した。ピアノは今後も加茂水族館でのコンサートなどで活用される。
2017年(平成29年) 12月6日(水)付紙面より
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酒田市は4日、2007年に同市で第1回を開いた「北前船寄港地フォーラム」が来年5月、中国遼寧省大連市で開かれると発表した。丸山至市長が出向き、今年4月に登録された日本遺産を活用し、インバウンドの観光客増を働き掛けてくるという。
北前船寄港地フォーラムは、作家で酒田市美術館長(当時は秋田公立美術工芸短大学長)の石川好氏が提唱した「北前船コリドール構想」に基づき07年11月、新田嘉一平田牧場グループ会長が中心になって酒田市で第1回を開催。その後、規模を拡大しながら全国の寄港地で、これまで22回開催。今年8月には、それまで主催してきたJR東日本、同西日本、同北海道、日本航空、ANA総合研究所など民間10社で一般社団法人「北前船交流拡大機構」(理事長・浜田健一郎ANA総合研究所シニアフェロー)を設立し、地域間交流の促進で地域活性化を図る体制を強化した。
大連でのフォーラム開催は、同機構が設立時から当面の目玉事業の一つとして打ち出していた。同フォーラムには国内の主要な経済人が主催に加わり、国内最大規模の地域交流フォーラムとなっていることから、今年7月に岡山県で開かれた第20回大会に大連市の関係者が訪れ、同市への観光誘客を視野に交流を打診してきたもの。機構側でも、地域間交流を拡大する狙いと合致し、初の海外でのフォーラム開催が決まった。
大連では来年5月26、27日、第23回北前船寄港地フォーラムとして開く。26日は同市恒例のアカシア祭り開幕式に参加し、フォーラムのレセプションを開催。27日はフォーラムを開き、地域間交流拡大の可能性などについて意見を交わす予定。その後、観光商談会も行う。
酒田市など全国11市町は今年4月、フォーラムで培ってきた交流をベースに「北前船寄港地・船主集落」として日本遺産に登録されている。同市では同遺産を活用し、観光誘客増を働き掛けてくる方針だ。
4日の定例記者会見で丸山市長は19年には大連側から北前船寄港地に使節団が来る予定になっていることにも触れ、「できれば市民訪問団などを組織し、庄内、山形県から多くを大連に送り込みたい」と交流促進に意欲を示した。