2017年(平成29年) 6月20日(火)付紙面より
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災害時に学校などの公共施設に開設される「避難所」の運営訓練が18日、酒田市の富士見小学校で開かれた。実地の避難所運営訓練は市内では初で、学区内の住民たちが、妊婦や障害者ら避難者の状況に応じて誘導するデモンストレーションを見たり、教室に確保された居住スペースに寝てみるなど、避難所を体感し、有事の対応を学んだ。
避難所は、災害で帰宅が困難になった住民らが一時的に滞在する施設で、事前に市町村長が指定する。有事には住民が自主的に立ち上げ、運営することになるため、自治会など住民組織は学校など施設側と事前に協議し、鍵の保管や進入方法、施設の使用方法(備蓄や立ち入り禁止区域の設定など)を確認しておく必要がある。しかし、そうした事前協議や運営訓練は全国的にあまり行われておらず、浸透が課題となっている。
酒田市では昨年9月、市全体の総合防災訓練を富士見小で実施した際、事務局が想定を読むだけの図上訓練を実施。しかし、関係者の間で「もっと踏み込んだ訓練を行うべき」という声が上がっていた。このため今回、富士見学区コミュニティ振興会(佐藤恒夫会長)が、毎年この時期に実施している学区の総合防災訓練の中で初めて実施。学区内10自治会の住民約190人が参加した。
訓練の想定は午前8時半ごろに庄内平野東縁断層帯を震源とするマグニチュード7・8の地震が発生し、酒田では震度6強を観測したというもの。午前9時の参集時には、参加者が体育館の受付で避難者カードを書き、同所に来るまでの道路や橋の破損、火災の発生状況などを報告、担当者がそれらの情報をまとめた。
その後、ペットを連れた人や妊婦、障害者、外国人など、さまざまな人が避難してきたことを想定し、ペットは人間の居住空間と分けたり、けが人は車椅子に乗せて保健室に誘導するなど、振り分けて案内するデモを見学。教室では机と椅子を片隅にまとめ、床にテープを張って1人2平方メートルの居住スペースを区切ると、12人分ほどしか確保できない状況を見た。
富士見コミュニティ振興会の大島久防災部長らによると、学区内の住民約6870人に対し、市の避難所に指定されている富士見小の収容人数は、教室と体育館で約500人、グラウンドに車を泊め車中泊するケースを含めても計約1000人。大島部長は「学校側とは以前から鍵の保管や進入方法、立ち入り禁止区域などを確認している。今回の訓練は、住民に避難所はこういう感じかと体感してもらった意義が大きい。教室には机や椅子があり、意外と収容できないとあらためて感じた」と話した。
市危機管理課によると、市内で避難所運営訓練を実地に行うのは今回が初。同課では、住民が学校側と協議するための指針となる資料作成を進めており、今秋ごろまでには配布できるようにしたいという。
2017年(平成29年) 6月20日(火)付紙面より
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庄内地方で初となる警察、消防、自衛隊、海上保安部の4機関合同の職場紹介イベント「正義のヒーロー大集合」が18日、酒田市光ケ丘二丁目の親子スポーツ会館で開かれ、地元の高校生たちが講話や体験などを通じ、それぞれの仕事への理解を深めた。
酒田警察署と酒田地区広域行政組合消防本部、自衛隊山形地方協力本部酒田地域事務所、酒田海上保安部の4機関が共催した。これまでも各機関は個別に職場紹介などを実施しているが、合同で実施することで全体のアピール度を高めようと、初めて開催。庄内地方の高校生と保護者、合わせて約30人が参加した。
初めに4機関の代表者が「苦労もあるが、住民の感謝の言葉が励みになる。女性の幹部も増えている」(警察)、「99の訓練を積み重ね、1の結果につなげる。ぜひ職業選択の一つに」(海保)、「陸海空を合わせた隊員は約25万人。国防や災害派遣など仕事は多岐にわたる」(自衛隊)、「消防、救急、救助の3業務それぞれやりがいがある」(消防)など各仕事を簡潔に紹介、アピールした。
参加者はその後、4グループに分かれ、4機関のブースを順に巡り、より詳しい解説を聞いた。自衛隊は女性の衛生科員による入隊の体験談や装備品の紹介、海保はロープワークやミニ灯台の点灯体験、消防は消防服の試着など体験メニューもあり、参加者は興味深そうに取り組んでいた。
鶴岡工業高3年の佐藤考朗さん(17)は「社会に貢献したい。特に公安関係の仕事に興味がある。今日はいろいろな話を聞き、あらためてやりがいのある仕事だと感じた」と話した。
4機関の取りまとめ役となった自衛隊酒田地域事務所の田中克法所長は「当初は警察志望でも、最終的には自衛隊に入る人など、4機関の中では結構、人の出入りがある。こうした機会を通じ、視野を広げ、全体としてアピール度が高まれば」と期待を語った。