2017年(平成29年) 9月1日(金)付紙面より
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2007年に酒田市で第1回を開いた「北前船寄港地フォーラム」を母体にした一般社団法人「北前船交流拡大機構」が設立され30日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタル東京で発表会が開かれた。鉄道や航空会社のほか、地元から平田牧場(酒田市)なども参画し、「北前船」をキーワードに培ってきた地域間交流を、海外を含めて拡大し、観光誘客を通じて地域の活性化につなげていく。
北前船寄港地フォーラムは、作家で酒田市美術館長(当時は秋田公立美術工芸短大学長)の石川好氏が提唱した「北前船コリドール構想」に基づき07年11月、酒田市で第1回を開催。その後、規模を拡大しながら全国の寄港地で開かれ、今年7月に岡山県で開かれた直近の第20回大会には55自治体が参加した。
フォーラムの主催はこれまで各開催地の自治体を中心に、民間がボランティア的に加わった実行委員会が担ってきた。一方、フォーラムを発展させる形で今年4月、酒田市を含む全国7道県の11市町が「北前船寄港地・船主集落」として日本遺産の認定を受けたこともあり、民間サイドで恒常的な組織の設立を望む声が強まっていた。
今回の機構はその流れを受け、8月9日付で設立。メンバーはJR東日本、同西日本、同北海道、日本航空、ANA総合研究所、日本政策投資銀行、成田国際空港、日本空港ビルディング、平田牧場、ホテル経営などのイマジン(青森県弘前市)の計10社。役員は、会長に元国土交通省事務次官で観光優良車普及機構会長の岩村敬氏、理事長に浜田健一郎ANA総合研究所シニアフェロー、地元関係では、名誉顧問にフォーラム立ち上げ時から支援している平田牧場グループ会長の新田嘉一氏、評議員議長に北前船寄港地フォーラム議長でもある石川氏が就任。
この日の発表会には、設立企業の代表や来賓として水嶋智観光庁次長、北海道から中国地方までの報道機関の関係者ら計約40人が出席。浜田理事長はあいさつで「地方都市は人口減少と過疎化で苦しんでいる。フォーラムが取り組んできた地域間交流を寄港地に限定せず、海外を含め広く門戸を広げたい」と設立趣旨を説明し、「設立企業からの支援は3年を区切りに、それまで収益を上げ、独り立ちしたい」と展望を語った。
具体的な事業としては、寄港地フォーラム開催の調整・支援、観光誘客の情報発信や旅行商品の造成などを予定。寄港地フォーラムは来年5月、初の海外として中国・大連で開催予定で、同所での物販や観光PR、その後の誘客も視野に入れている。ライバルの鉄道と航空会社という異色の連携については「昨年から『ロス発京都行き』の旅行商品も出ており、新たな取り組みが広がる」(JR関係者)という期待の声もあった。
2017年(平成29年) 9月1日(金)付紙面より
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慶應義塾大教養研究センター主催の「庄内セミナー」の山伏修行体験が31日、鶴岡市のいでは文化記念館を拠点に行われた。参加した同大の学生らが、滝打ちなどを通じて擬死再生の行に触れた。
同セミナーは2008年度に始まった「鶴岡セミナー」を前身に、毎年開催。庄内の自然や文化、歴史を体感しながら、「生命」をテーマに学ぶ。8回目の今回は学部生26人と大学院生1人の計27人が参加。29日から9月1日までの3泊4日の合宿形式で行われ、同市大網の注連寺での即身仏拝観、旧庄内藩校致道館での論語素読体験などの他、テーマに沿った活動を行う。
31日は、いでは文化記念館で山伏修行体験塾の太田秀廣塾長(62)から出羽三山で行われている擬死再生の行について学んだ後、庄内町立谷沢へバスで移動。立谷沢川流域のダムで滝打ちに臨み、羽黒山登山の前に身を清めた。船をこぐような所作の「鳥船」で準備運動した後、「エイ!」と気合を発して落差約4メートルの水の中へ。初めは肩口から容赦なく浴びせられる冷水にもだえていた学生らも、次第に落ち着き、静かに目を閉じてじっと手を合わせた。
商学部1年の水戸梨乃さん(19)は、「古里の北海道でレストランを開きたい。地元の食材を生かしているアル・ケッチァーノがきっかけで庄内を知り、今回参加した。少し熱があったがもう下がりました」と話した。
学生たちはこの日、トウガラシをいぶした煙の中で耐える「南蛮いぶし」、火の上を渡る「出生(でなり)」なども体験。後日、「生命」に関するリポートをまとめ、考えを深める。