2017年(平成29年) 9月2日(土)付紙面より
ツイート
鶴岡市羽黒町手向の出羽三山神社(宮野直生宮司)の「八朔(はっさく)祭」が31日夜、羽黒山頂で行われた。「秋の峰」で修行を積んだ修行者たちが護摩壇の火柱を突く勇壮な火祭りを繰り広げた。
八朔祭は秋の峰を締めくくる祭り。二百十日を前に暴風雨が吹かないように五穀豊穣(ほうじょう)などを願うとともに、修行者たちが新しい生命を得て生まれ変わるための自分の葬儀ともされる。祭りの名称は旧暦時代に8月1日(朔)に行われていたため。
今年の秋の峰には、海外出身者を含め全国から18―80歳の男性149人が入峰(にゅうぶ)。8月26日から羽黒山中腹の吹越籠堂に寝泊まりしながら、山々を巡る山駆けや一汁一菜の食事、トウガラシをいぶした煙の中に居続ける「南蛮いぶし」など、「擬死再生」の荒行を重ねた。
今年から1時間ほど祭りの時間が早まり、この日は午後8時半ごろから出羽三山の開祖・蜂子皇子を祭った蜂子神社前で神事がスタート。5日間の修行を終えて精悍(せいかん)な顔つきとなった山伏たちが境内に並び、一人一人の山伏名が読み上げられ、「受けたもう」の声が響いた。
午後9時半ごろ、神社前の護摩壇に火が放たれ、秋の峰を10回以上経験した修行者「度位の新客」たちが長さ4メートルの棒で護摩壇を突く「火ばし神事」で祭りは最高潮に。修行者たちが闊歩(かっぽ)しながら現れ、棒を中心に体を半回転させながら火柱を突き、修行を締めくくり火祭りを繰り広げた。
2017年(平成29年) 9月2日(土)付紙面より
ツイート
ドールハウス作家・研究家の第一人者であった礒貝吉紀さん(1933―2011年)が約40年にわたって手掛けた作品を紹介する企画展「遊びのこころ 礒貝吉紀ドールハウスの世界」が8日(金)から、鶴岡市の致道博物館で始まる。
ドールハウスは16世紀ごろより広がりを見せ長きにわたって世界中で愛されている。時代や地域の生活空間を小さなスケールで再現した模型で、現在は20世紀にアメリカで採用された縮尺サイズの12分の1スケールが一般的な規格となっている。
礒貝氏は1970年代初めに欧米のドールハウスに魅了され、アンティーク・ドールハウスの調査取材を開始。海外の現代作家と交流を深めるとともに国内作家の草分けとして活躍した。2015年春、礒貝さんの妻・三枝子さんが同博物館で行われたひな道具の企画展を訪れた際、酒井忠久館長や妻の天美さんと交流が生まれたことをきっかけに企画展が決まった。
今回は礒貝さんが残した作品35点を展示する。注目されるのは児童文学「アルプスの少女ハイジ」の物語からいくつかのエピソードを再現した「ハイジが暮らした都会の家」。高さ175センチの大型作品で、天蓋(てんがい)付きのベッドや車椅子の置かれたクララの部屋、出窓のあるハイジの部屋などがある。そのほか家具店や模型店を再現した「ロンドンのお店シリーズ」や「貴族の館のライブラリー」など英国の作品、「サンフランシスコ・ヴィクトリアン」など欧米の作品、「呉服店」など和風な作品も。
三枝子さんは「不思議な雰囲気を醸し出す作品を眺めて。お気に入りを見つけたら、自分が小さくなった気持ちになって作品世界で遊んでもらえれば」と呼び掛ける。また、今回展示する作品のうち長女のために作った作品を除く34点を致道博物館に寄贈する。「初めて致道博物館を訪れた時、旧西田川郡役所の建物を見てふと主人の作品が浮かんだ。作品のついのすみかになれば」と話している。
展示は10月4日(水)まで。9日(土)午後2時からは三枝子さんを招いたゲスト・トークが開かれる。作品にまつわるエピソードなどを紹介する。申し込み不要、参加無料(入館料は別途)。問い合わせは同博物館=電0235(22)1199=へ。