2019年(令和1年) 11月12日(火)付紙面より
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家運長久などを願ってカブを神仏にささげる年中行事「かぶのお歳(とし)夜」が10日、鶴岡市の温海地域などで行われた。同市越沢の農業、五十嵐春政さん(71)方では、直径20センチ、約1・5キロの立派な温海かぶとぼた餅をお供え。五十嵐さんは「今年も立派なカブを準備できて良かった」と話した。
同市温海地域を中心に農家、商家問わず古くから伝わる風習だが、現在でも続けている家庭は越沢などの一部。用意するカブ2つとぼた餅2つはいずれも大きいほど良いとされ、「かぶ」に「株」を重ね、「家の株が大きくなるように」との願いを込めて毎年この日に行われている。「温海町史別冊温海の民俗」によると、田の神祭りの一種とみられるという。
自家消費用で温海かぶを栽培している五十嵐さん方では今年、出来に恵まれて立派なカブが用意できた。この日夕方、みずみずしい葉と鮮やかな紫色の巨大なカブと、平たく形を整えた自家製ぼた餅を一緒にお供えして手を合わせた。
五十嵐さんは「家族の無事などを願う大切な行事。子どもたちにも受け継いでもらいたい」。お供えしたカブは家族でいただく習わしで、「うちではみそ汁に入れて1週間かけてありがたく食べる」と笑っていた。