2019年(令和1年) 7月27日(土)付紙面より
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山形大学術研究院の本山功准教授(地質学・古生物学)は25日、先月18日に発生した本県沖を震源とする地震について、「鶴岡市小岩川地区で局所的に震度6強の揺れがあったと推定される」と発表した。気象庁の観測は震度6弱となっているが、本山准教授は同市―新潟県村上市の沿岸地域で墓石の変位や転倒を調査し、観測以上の揺れがあった可能性を示した。
発表は同日、山形市の同大小白川キャンパスで行われた学長定例会見の席上で行われた。本山准教授は地震発生の翌19日と22、23日、今月10日に鶴岡市から新潟県村上市にかけて、沿岸地域一帯で被害状況を調査。特に墓石の変位や転倒状況のデータを収集した。
墓石に注目した理由は▽国内の墓石は形状や材質がおおむね共通している▽地震計の設置点に比べ、墓地は数多く高密度に分布している―など。これらにより、墓石の並進や回転、転倒といった変位は同一基準で広域的な被害状況の比較や地震動の解析に役立つとされる。2017年に発表された日本地震工学会の論文では、特に直方体の和型墓石の転倒率が震度の目安となると指摘している。
本山准教授はドローンによる空撮と地表踏査で、計51地点の墓地の墓石について変位状況を調査。墓石の転倒数を総数で割って転倒率を算出した。この中で最も転倒率が高かったのは小岩川地区の西光寺で転倒率は13?52%。日本地震工学会の論文を基準とすると震度6強の揺れが推定されるという。
このほか、鶴岡市大山と由良、村上市府屋の3地点で震度6弱、鶴岡市山五十川、槙代、小国、村上市岩石など合わせて8地点で震度5強と、残り39地点は震度5弱以下とそれぞれ推定された。
本山准教授は「小岩川地区で局所的に揺れが大きくなったのは、山地形の尾根部で地震動が増幅されたためと考えられる。1964年の新潟地震の際も、震源から離れた鶴岡市大山地区の被害が周辺より大きかったことが知られている。類似したメカニズムで発生した今回の地震も同様の傾向が認められた」と考察している。
本山准教授によると、小岩川地区は震源に最も近いことから家屋や墓石に大きな被害が生じたと考えられるが、近隣の大岩川地区や鼠ケ関地区での墓石転倒率はほぼ0%で、小岩川地区の強い揺れは局所的だったことを示しているという。また、地震計により震度6弱が計測された温海川付近での墓石転倒率は0%(推定震度5弱以下)で、計測震度と推定震度に開きが生じたことも明らかにした。
本県沖を震源とするマグニチュード6・7の地震は6月18日午後10時22分に発生した。県内では鶴岡市で震度6弱の揺れを観測。本県をはじめ新潟、秋田の各県で家屋の損壊や塀の倒壊、液状化現象、墓石の転倒など被害が発生した。
2019年(令和1年) 7月27日(土)付紙面より
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鶴岡市と大手旅行会社の阪急交通社(本社・大阪市)は25日、鶴岡の地域資源を活用し、特性を生かした農業と食や観光とを融合させた「農業観光連携事業」の推進に関する協定を締結した。特産農産物の収穫期の作業人員不足などに対応する首都圏からの農作業体験ツアーを企画し、作業の労働力確保や地域活性化を図るもの。今秋の庄内柿収穫体験からツアーを実施する。
同社は昨年、天童市でサクランボの収穫体験ツアーを実施した。これに着目した鶴岡市が、農業の担い手不足解消などに向けた連携事業について同社と調整してきた。
協定を踏まえ両者は今秋、市内の参画農家を募って研修会を開いた上で、庄内柿収穫などの農作業体験を中心に市内観光も取り入れた6日間程度のツアーを実施する。来年以降はサクランボ、だだちゃ豆、ブドウなども加え、農業体験と観光を融合したツアープログラムを企画していく。ツアー参加者や生産者にアンケート調査し、内容の磨き上げを行い、その後のツアーに反映させていく。市はリピーターを増やし、移住や新規就農につなげていくことも視野に入れている。
本年度、国の農山漁村振興交付金の事業に採択され、来年度にかけて交付金を受ける。阪急交通社は、鶴岡での農作業体験ツアーをモデルに各地に広めることも想定している。
協定締結式が鶴岡市役所であり、皆川治市長と阪急交通社の酒井淳代表取締役専務執行役員が協定書に調印した。皆川市長は「鶴岡の基幹産業の農業は生産だけでなく食品製造や観光などさまざまな分野と結び付く裾野の広い産業であり、ユネスコ食文化創造都市の根幹を支える大切な産業。ツアーを通じて鶴岡ファン、リピーターの獲得を目指したい」、酒井専務は「鶴岡・庄内は食の宝庫。首都圏だけで200万人いる会員に働き掛けたい。ほかにない新たな価値を生み出し、地域活性化に貢献する体験プログラムツアーを企画していきたい」と話した。