2020年(令和2年) 3月24日(火)付紙面より
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酒田市の酒田港外港地区大浜海岸でアミノ酸が溶出する特殊なコンクリートブロックを海中に沈め、海藻の生育状況などを調べている産学官民のグループが、今シーズンは海藻にハタハタの卵塊(ブリコ)が昨シーズンの約4倍の42個付着しているのを確認した。砂浜に人工的に藻場を作り、魚の増殖を図る試みが、また一歩前進した。
この試みは2015年度、国土交通省酒田港湾事務所が、酒田港の生物多様性創出を図る取り組みとして協力団体を公募して始まった。地元内外の企業や東北公益文科大などが主体となり、大浜の沖合約100メートルの離岸堤内側(陸側)にアミノ酸の一種「アルギニン」を重量比3%混ぜた環境活性コンクリートブロックを6個(1個4トン)沈め、海藻「アカモク」(ギバサ)の母藻を植えた。
16年度には加茂水産高や鶴岡工業高等専門学校、酒田光陵高、17年度には漁業者による「酒田港藻場づくりの会」や漂着ごみ問題に取り組むNPO法人「パートナーシップオフィス」なども合流。同年度からは水産庁の助成を受け、多様な主体が連携して海岸地形と海藻の生育の関係や漂着ごみの実態など、さまざまなテーマで調査・研究を続けている。
コンクリートブロックのアカモクは順調に生育し、昨シーズンに初めて、ハタハタの卵塊が約10個確認された。今シーズンは1月13日にダイバーが潜り、42個を確認した。
15年度から中心的に関わっている酒田市のダイビングスクール「セカンドリーフ」代表の佐藤一道さん(50)は「何もなかった砂地に海藻が繁茂し、昨年からハタハタの産卵場所として定着しつつある」とみる。
佐藤さんらはまた、近くの離岸堤(消波ブロック)にもアカモクの母藻を植え、どの場所で繁茂しやすいかなども研究。当初は波の陰になる離岸堤陸側の方が繁茂すると予想していたが、実際は波を受ける沖側でよく繁茂することが分かってきた。離岸堤には昨年までハタハタの卵塊がほとんど付いていなかったが、今年は沖側に繁茂した海藻にびっしり付いていたという。
本年度はそのほか、酒田光陵高が、波の進入や砂の堆積と生物の生育との関係究明などを念頭に、新たにドローン(無人航空機)を使って海岸地形を空撮。加茂水産高はウニや巻き貝などによる海藻の食害状況の調査を継続している。
佐藤さんは「人が手を加えても海藻が全く増えない場所もあれば、手を加えれば増える場所もある。今後、地形や海水の流れとの関係などを解析し、港湾で魚を育む環境を突き詰めていきたい」とする。また、「酒田周辺の海は大半が砂地。港湾の構築物自体が生物多様性を創出するものになれば、港湾計画にもそうした視点が盛り込まれていくようになるのでは」と、「魚を育む港」への夢を膨らませている。