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2020年(令和2年) 7月21日(火)付紙面より

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“蓄養ヒラメ”出荷スタート

 鶴岡市内の定置網漁業者が県や市などと連携し、天然のヒラメを生きたマアジの餌で蓄養し、漁獲が少なくなる夏場に出荷する取り組を進めている。2カ月間ほど同市三瀬の県栽培漁業センターの水槽で蓄養されたヒラメの市場への出荷が20日からスタートし、庄内浜漁業の新たな振興策の一つとして注目される。

 庄内浜では毎年5―6月に定置網に加え刺し網漁や底引き網漁によるヒラメの漁獲量が増えるが、産卵期に入って身が薄いため、品質、魚価ともに低下するという。鶴岡市の由良沖と堅苔沢沖で定置網漁を行っている仁三郎(同市三瀬、伊関豊社長)が、産卵期に水揚げされたヒラメを陸上の水槽で蓄養し、身を厚くして出荷する取り組みを関係機関に提案。県産水産物の安定供給と付加価値化を狙いに本年度、短期蓄養ヒラメの実証事業として進められた。

 県栽培漁業センターの屋外にある20トン水槽(水深70センチ)に、5月に水揚げしたヒラメ60匹を入れ、同じ定置網に入ったヒラメの好物というマアジを餌として供給。蓄養に伴う費用のコスト削減も図っている。県水産振興協会、県漁業協同組合も管理に関する助言、出荷体制の整備などで連携。品質については市内の料理人からも高い評価を受けている。20日から3日間10匹ずつ、同市の県漁協由良総括支所の地場市場に本格出荷される予定。

 この本格出荷を前に18日、関連者向けの説明会と試食会が県栽培漁業センターと同市三瀬の旅館「仁三郎」で開かれた。蓄養を担当する同社の船頭・伊関領平さん(36)が「ヒラメにストレスをかけないよう水槽内の密度が高くならないようにしている。生きたマアジを使うことで餌を与える労力も軽減でき、身も2倍近く厚みが出ている」と成果を説明。刺し身の試食会で同旅館の土田常雄料理長(68)は「エンガワに厚みがあり、身を含めてヒラメ本来のうま味がある。夏場の漁に左右されず使いたいときに仕入れられるメリットは大きい」と話した。

 県などによると、天然ヒラメを同じ天然の生餌で蓄養する事例は全国的に珍しいという。

本格出荷を前に水槽からヒラメを揚げる仁三郎船頭の伊関さん=18日、鶴岡市三瀬の県栽培漁業センター
本格出荷を前に水槽からヒラメを揚げる仁三郎船頭の伊関さん=18日、鶴岡市三瀬の県栽培漁業センター



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