2020年(令和2年) 7月22日(水)付紙面より
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鶴岡市の金峯山(471メートル)山頂にあり、屋根の張り替えなど約100年ぶりとなる“令和の大修理”が行われている国指定重要文化財「金峯神社本殿」の見学会が19日、同本殿で行われた。普段は入ることのできない本殿内部も公開され、参加した市民らは江戸時代以前の中世の創建とされる歴史資産への理解を深めた。
今回の修理は1922(大正11)年以来の大規模保存修理工事で、2層となっている屋根の銅板の全面ふき替えと、内部の傷んだ木材の補修・交換などを、本年度までの2カ年で行う。国や県、市の補助を受け金峯神社(佐々木孝善住職)が進め、来年の金峯山開山1350年に合わせ“令和の大修理”を終えた本殿をお披露目する計画。
保存修理工事の市民向け見学会は、昨年8月に続いて2回目。今回は2層の屋根のうち下層部分の屋根の木造構造と、本殿内にある内陣の建物の修復状況が公開された。市内や山形市、庄内町から40人が参加し、8人ずつ5回に分けて行われた。屋根は施工の鶴岡建設の担当者、内部は公益財団法人文化財建造物保存技術協会(東京)の藤倉賢一技術主任が説明に当たった。
屋根の部分に関しては、本殿正面に掲げられていた「金峯神社」の扁額(へんがく)を取り外したところ、庄内藩主酒井家の家紋「かたばみ紋」の彫刻(直径約27センチ)が施されていることが分かった。紋には金箔のかけらが残されていた。江戸時代半ばの元文元(1736)年に、酒井家の寄進により、こけらぶきの屋根が当時では珍しい銅板ぶきに改修された際に証しとしてはめ込まれたと推察されるという。
また、禅宗様仏殿形式の本殿の造りに対し、内陣の建物は神社本殿の平面という特異な構成。本殿外観の白木に対し、内陣はうるしを多く使った凝った意匠となっており、藤倉技術主任は「酒井家の殿さまの威厳を示すものでもあったのではないか」と解説した。
見学会に参加した鶴岡市大山二丁目の畳店の佐藤光逸さん(71)は「鶴岡工業高建築科を卒業した後、本気で宮大工になろうと考えたこともあった。昔の匠の技は素晴らしく、それを見学できて良かった。木造建築物は修復が可能で、何百年も持つ。それを可能とする匠の育成も大事だ」と話した。
金峯神社本殿は、意匠的に価値が高く、東北地方における数少ない修験道の遺構としても重要だとして、2001年に重要文化財に指定された。