2020年(令和2年) 10月10日(土)付紙面より
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「鳥海山・飛島ジオパーク」の再認定に向けた現地調査が9日まで3日間、酒田、遊佐両市町はじめ鳥海山を取り巻く山形、秋田両県の4市町で行われた。日本ジオパーク委員会(JGC)から派遣された調査員2人がジオパークの見どころ「ジオサイト」を視察した他、関係者からの聞き取り調査も実施。今回の現地調査を踏まえ、再認定の可否は来年2月に発表される。
酒田と遊佐、秋田県にかほ、由利本荘の4市町による鳥海山・飛島ジオパークは2016年秋、JGCの認定を受けた。同ジオパーク推進協議会(事務局・にかほ市)と4市町は「日本海と大地をめぐる水と命の循環」をテーマに、水と命の循環を観察することができる貴重な自然環境を形成する、この地域の豊かな自然・文化を次世代につなぐことを目的に、これまでさまざまな活動を展開してきた。
認定を継続するには4年ごとにJGCによる再審査を受ける必要がある。今回調査員として訪れたのはJGC委員の山口勝さん、豊田徹士さんの2人。初日は九十九島(にかほ市)を視察した後、遊佐町に移動し大平展望台から一帯の地形を確認した。
2日目は、午前8時から同町直世の箕輪鮭漁業生産組合(佐藤仁代表理事組合長)で本県随一の清流・牛渡川を遡上(そじょう)するサケの捕獲を見学した後、鳥海山・飛島ジオパークガイドの会の畠中裕之さん(53)=同町吹浦=の案内で、いずれもジオサイトとなっている牛渡川と丸池様、海底湧水が目を引く釜磯海岸、鳥海山大物忌神社吹浦口之宮を回った。
このうち4年前の認定審査の際、保全の在り方を指摘された丸池様では、付近の景観に配慮しながら町が設置した「立ち入り禁止ロープ」を確認。畠中さんは「秋に認定を受け、翌年春に設置した。以前は夏の暑い日にアオミドロの発生が見られたが、畔まで近づけなくなったことからここ数年はなくなった」と紹介した。2人はまた、丸池様を見下ろす小高い箇所に建つ、岩をご神体とした「古四王神社」に興味を示し、時間をかけて調査していた。
9日午前には酒田市役所で4市町の首長と意見交換。現地調査を終えた山口さんは「4年間、地域が一丸となって活発に活動していると思った。先人が残した風景が残っており、ジオパークを通した地域づくりをしっかりとしている」、豊田さんは「真摯(しんし)にその発信について取り組んでいるという印象。ガイドの質が高く、仲よく話せたのが本当に良かった」と話した。
2020年(令和2年) 10月10日(土)付紙面より
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鶴岡市藤島庁舎は今月5日から10日までの6日間、長沼、八栄島両地区の住民を対象に、デマンドタクシーのテスト運行を行っている。来春から住民主体で本格運行する方針で、今回は利用者から運行ルートや時刻表、乗降場所などへの意見を聞き、課題を洗い出す。
両地区では1993年3月に民間の路線バスが廃止され、その後、旧藤島町が2000年4月に導入した町営バスも03年3月に廃止。以来、路線バスの空白域となっている。
藤島庁舎は住民の足を確保するため19年度から大東文化大(東京都)に委託し、デマンドタクシー導入の可能性を調査。今年6月の報告で「(09年1月から導入している)東栄地区と同程度の利用を確保できる」とされた。これを受け、7月21日には両地区自治振興会や町内会、市などで「長沼・八栄島地区地域公共交通検討委員会」(委員長・板垣吉徳上新田町内会長)を設立し、運行の在り方を検討してきた。
これまでのところ、運行路線は1藤島・鶴岡方面(運行は月・水・金曜日)2三川町方面(運行は火曜日)3庄内町方面(運行は木曜日)―の3ルートを予定。小型タクシー(運転手を除く定員4人)を使い、前日までの予約制で、両地区住民の自宅と目的の乗降場所との間を1日3往復する。
乗降場所は長沼3カ所、八栄島2カ所、藤島7カ所(藤島庁舎、スーパー、JR藤島駅など)、鶴岡7カ所(エスモール、荘内病院、市役所など)、三川町3カ所(イオンモールなど)、庄内町6カ所(庄内余目病院、スーパーなど)。申し込みが多い場合は台数を増やすなどして対応する。料金(片道)は、例えば長沼から乗る場合、長沼地区内200円、三川町300円、庄内町400円、藤島500円、鶴岡800円を予定。
今回のテストは運行計画の方針に沿ったダイヤで運行し、希望した29人に無料で乗車してもらう。7日の藤島・鶴岡線第1便に乗り、Aコープふじしま店(藤島)で買い物した同市八色木の庭師、斎藤幸作さん(89)は「そろそろ免許返納を考えている。家族は日中、仕事で忙しく、送迎は頼みづらい。デマンドは料金が安く便利なので利用したい。ただ、帰り便まで待ち時間が2時間と長く、改善が必要」と話した。
市藤島庁舎総務企画課によると、利用者へのアンケートを集計して課題を精査し、来月上旬ごろの第4回検討委員会で運行計画の素案をまとめる。同月下旬から12月上旬にかけ、検討委とほぼ同じメンバーでデマンドタクシーの運営主体となる仮称「長沼・八栄島地区地域公共交通運営協議会」を設立。運行計画をまとめ、来年2月ごろの市地域公共交通会議に諮り、承認を得た上で陸運局に運行を申請。同4―6月にも法令上の「実証試験」として本格運行を始める予定だ。