2020年(令和2年) 11月6日(金)付紙面より
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理化学研究所や慶應義塾大先端生命科学研究所(鶴岡市)などの共同研究グループは、クモ糸の中でも強靭(きょうじん)な「牽引糸(けんいんし)」について、シルクタンパク質が束状に集まり繊維構造を形成する過程を明らかにし、人工的に再現することに初めて成功したと発表した。天然のクモ糸と同様の特性を示す素材を人工的に合成する技術開発につながることが期待される。研究成果は4日付の米オンライン科学雑誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。
クモの牽引糸は軽量で強靭な物性から、高強度構造材料など幅広い分野への応用が期待されているが、物質が集まって紡糸されるメカニズムは詳細には解明されていなかった。慶應先端研の荒川和晴准教授らの共同研究グループは、ジョロウグモの牽引糸の成分のシルクタンパク質に着目。組み替えた遺伝子を大腸菌に導入し、クモと同様の化学構造(アミノ酸配列)を持つシルクタンパク質を発現させ、解析を進めた。
その結果、シルクタンパク質が0・1―10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)の無数の球状液滴「液液相分離(えきえきそうぶんり)」の状態を経て、網目状の微小繊維「マイクロフィブリル」を形成することを確認。さらに一定の力を加えマイクロフィブリルを束状に集めることで、天然の牽引糸と同様の階層構造を再現することに成功した。
共同研究グループは「自然界の材料を用い、非石油のプロセスを利用した素材生産は、持続可能な社会形成にも役立つ。自然界で起こっている分子機構を明らかにし材料設計に生かす戦略が今後、幅広く採用されることを期待する」としている。
人工クモ糸に関しては、慶應先端研発バイオベンチャー「スパイバー」が世界最先端を走り、脱石油の構造タンパク質素材の量産を進めている。
2020年(令和2年) 11月6日(金)付紙面より
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暴れて傷つくことのないよう船上で生け締めし、神経締めを施したサワラ「庄内おばこサワラ」について理解を深める特別講座が4日、酒田市の酒田調理師専門学校(土門陽吉校長)で開かれ、全学生27人がプロの料理人の手ほどきを受けながら調理に挑戦した。
庄内おばこサワラは刺し身で食べられる高鮮度を1週間以上維持することができ、熟成により上品なうま味を楽しめることから中央市場でも高い評価を得ている。今回は、庄内浜文化伝道師協会による伝道師講座の一環として、おばこサワラをはじめ庄内浜に水揚げされる魚介類のブランド化を推進している「庄内浜ブランド創出協議会」の協力で同校が企画。伝道師協会事務局を務める県庄内総合支庁水産振興課職員の疋田志乃さんによると、おばこサワラを使った伝道師講座は今回が初という。
この日、講師を務めたのは、いずれも庄内浜文化伝道師で、日本料理「旬味井筒」(同市中町二丁目)の店主・石寺憲和さんと店長・関野勇美さんの2人。おばこサワラ2尾と通常のサワラ1尾の計3尾を用意、お造り、照り焼きの調理法を指導した。
学生たちを前に、石寺さん、関野さんは三枚におろすなど調理しながら「サワラは皮の部分もおいしく食べられる。焼く時は皮の方から。焦げ目が入った方がおいしそうに見える」「お造りは切り込みを入れると、しょうゆがよく染みる」などと精力的に指導。学生たちは早速、半身を切り分けたり、しょうゆと砂糖、酒で照り焼きにするなどした。
昼食時には完成した2品に加え、石寺さんと関野さんが調理したサワラの「あら汁」に舌鼓を打った。実習を前に、同課専門水産業普及指導員の忠鉢孝明さんがおばこサワラの特徴について解説した。疋田さんは「まずは調理師を目指している学生から知ってもらい、より多くの人に広めてもらえたら」と話した。